成果の基準を高く設定するということは、目標を定める能力、その目標を達成する能力を体系的に評価するということである。
経営管理者は、部下とその仕事ぶりについての評価をもとに、諸々の意思決定を行う。したがって経営管理者は体系的な評価の方法を知る必要がある。
部下もまた、経営管理者たる上司に対し、勘による決定ではなく合理的な決定を要求する。なぜなら、それらの決定は上司が何を期待し、何を重要と考えるかを明らかにするからである。 部下とその仕事ぶりを評価することは、上司たる経営管理者の仕事である。評価とは判断である。判断には常に基準が必要である。明確かつ公にされた基準に基づかない判断は恣意である。評価する者とされる者の双方を堕落させる。
いかに科学的であり、いかに多くの洞察を与えてくれるものであっても、潜在能力、人柄、将来性など、証明済みの仕事ぶり以外のものに焦点を合わせた人事評価は、力の濫用である。しかし最大の間違いは、弱みを中心に人を評価することである。
人の評価は、その人ができることを引き出すものでなければならない。その人の強みを理解して初めて、「彼の強みを生かしてさらに進歩させるためには、いかなる弱みを克服させなければならないか」を考えることができる。
弱みそのものは、通常誰の目にも明らかだが、いかなる意味もない。重要なことは、さらにより良く行い、さらに多くを知り、さらに成長していきたいという意欲である。それらの欲求が、より優れた、より強い、より成果をあげる人間をつくりあげる。
組織文化のを形作るものの大きな要因としての、人事評価に関わる記述です。
人事考課ともいわれますが、人事評価の究極の目的は、本章の最初に出てきた凡人を持って卓越した成果をあげることです。一人ひとりの強みを組み合わせて組織としての成果と、一人ひとりの成長の両方を達成することです。
人事評価についてよくいわれるように、人が人を評価するのでさまざまな問題が発生します。できるだけ恣意的な評価を避けるために上記のような、過去の仕事ぶり、事実と基準に基づいた評価を行うようにすべきだということです。
それでも、評価する者には次のように陥りやすい傾向があるので、気をつけなければなりません。寛大化傾向、ハロー効果、平均化傾向、論理的誤差、対比誤差、期末効果などが挙げられます。
ドラッカーはこれらの評価誤差については触れていません。上記のように、弱みは目立つがそこに注目するな、強みを引き出し成長させるように評価せよという原則を述べています。
2013/7/22