人事管理論の限界は容易に理解できる。まったくのところ、この分野の専門家でさえ暗にそれを認めている。今日、あらゆる企業の人事部長にとって変わることのない悩みは、事業に対する自らの貢献をほとんど証明できないことにある。
ある皮肉屋は、本業の仕事と関係のないもの、事業のマネジメントではないものばかりを集めたものが人事管理であると言っている。残念ながらこの酷評には根拠がある。
人事管理においては、人と仕事のマネジメントという仕事が、単なる書類整理の仕事、社内福祉士の仕事、組合との揉め事の予防や処理などの寄せ集めと化している。
それらのものは、一つの部門にまとめる必然性さえ疑われる。典型的な人事部の組織図を見ても、あるいは人事管理論の教科書の目次を見ても、人事部の仕事がごった煮であることは明らかである。しかもそれらのうち、いずれも特別のマネジメント能力を要求しない。いずれもそれだけでは事業に対し大きな影響を与えない。
人事管理論の最高の教科書としてドラッカーが紹介しているのは、ポール・ピゴーズとチャールズ・マイヤーズ共著の「人事管理(Personnel Administration: A Point of View and a Method)」という本です。
人事部がどのように組織され運営されるべきかについて記述されているようですが、結局は上記のように「ごった煮」であることは変わりなく、この教科書の通り実践したとしても、本業である事業とは関係のない仕事を集めてきたようなものになってしまうと批判しているのです。
なぜ人事管理論がそのような状況に陥っているのかについて、次のセクションで考察をさらに加えます。
2013/9/13