ある企業のトップマネジメントが私に言っていた三つの気質、「考える人」「動く人」「顔になる人」の気質を一人の人間が同時にもつことなど考えられない。しかし企業の成功に必要な活動は、これら三つの気質のすべてを必要とする。
したがって、結論は一つしかない。CEOの仕事は、一人の仕事として組み立てることは不可能だと言うことである。それは、共同して行動する数人からなるチームの仕事として組み立てる必要がある。
この結論の第一の利点は、CEOの孤立化という問題の解決である。CEOはその地位ゆえに孤独である。皆が彼から何かを得ようとしている。したがってCEOはそれらの攻勢から身を守るためにも、人との間に距離を保たなければならない。
CEOの仕事を正しく組み立て、かつ必要なだけの孤立を守り、しかも仕事の能力を確保するには、チームが必要となる。トップマネジメントチームとすることによって初めて、CEOは自由に話せる人、すなわち彼から何も得ようとしない人たちをもつことができる。それによって健全な決定に必要な多様なものの見方、意見、経験をもつことができるようになる。
第二の利点は、後継者の問題の解決である。CEOが一人であったのでは後継者を計画的に定めることはできない。しかも、ひとたび後継者を指名してしまえば、間違いが明らかになっても、もはや辞めさせたり棚上げしたりすることはできない。
しかし、CEOがチーム、例えば3人からなるチームであったならば、全面的な交代はほとんど起こりえない。3人のうち1人を代えることはかなり容易である。任命の間違いも致命的で取り返しのつかないことではなくなる。
CEOが一人の仕事とすれば、前述のスーパー社長のように数え上げると40もの仕事を一人で同時並行で進めなくてはならなくなってしまいます。そんなことはほとんどの人ができないことです。
そうはいっても、それらの仕事の一つひとつは、企業にとって重要で、困難で、時間がかかり、異なる資質を要求するものです。
したがって、しなくてはならない仕事を他の人と分担せよ、つまりCEOは一人ではなく、異なる資質をもつ複数人によるチームで行うべきだと述べているのです。
上記で「皆がCEOから得ようとしている何か」とは、例えば、部下は提案を売り込もうとし、地位を上げてもらおうとするし、下請けは製品を売ろうとするし、顧客はより良いサービス、よりやすい価格を要求する、というようなことです。
これらの攻勢を一人で受けていたのでは身が持ちません。そのためにも複数人で引き受けるようにした方が良いと言うことなのです。
2013/7/31