企業が成功し繁栄するには、少なくとも三種類の人たちが必要である。第一に「経営管理者」である。第二に熟練、未熟練の肉体労働者および事務員などの「一般従業員」である。そして第三に「専門職」である。
経営管理者は、部門全体の成果について責任をもつ。したがって、当然他の人の仕事について責任をもつ。これに対し専門職は一人で働こうとチームで働こうと、自らの貢献について責任をもつ。
専門職と経営管理者のもう一つの違いは、仕事の目標にある。事業上の目標に直接焦点を合わせて目標を設定される仕事は、すべて経営管理者の仕事である。
専門職は自らの目標を専門的な目標それ自体から引き出す。専門職にとって事業の目標は、何に力を入れ、いかに企業のニーズに自らの専門能力を適合させ、いかなる優先順位を定めるかに大きな影響を与えるにすぎない。
彼らの仕事の基準、目標、視点が、専門家としての基準、目標、視点によって規定されるということであり、事業の外の世界で決められるということである。
これまで、企業で働く人の目標は、事業の目的や部門の目標に対してどのようにどのくらい貢献するのかということから設定され、そこで働く人たちの「貢献の連鎖」によって、調和のとれた活動になっていくということを論じていました。
このセクションの一部にドラッカーは本書の基本命題を二つ記しています。
一つは「資源としての肉体など存在しえないということ」であり、もう一つは「企業に働く人全員にマネジメント的視点を持たせることが必要で、そのための方法は彼らに責任を権限を与えること」だとしています。
しかし、企業で働く専門職には別の面があるということを、上記のように第三の職として分類しました。前のセクションで例示されたように、工学関係の技術者や化学者、地質学者、自然科学者、弁護士、統計学者、公認会計士、心理学者といった人たちです。これらの人にはそれぞれの専門分野での正しいとされている基準によって働くことが期待されています。
たとえば企業内弁護士は、事業と法律との折り合いをつける場面でその能力を発揮するので、事業の目標や活動が彼の仕事に大きな影響を与えることは間違いないのですが、事業の活動と法律とが激しく対立したときには、法律を優先することを期待されているということです。
そのためドラッカーは、「その仕事ぶりは、事業への貢献ではなく、専門的な基準によって評価される。」としたのです。
2013/10/12