専門職を生産的な存在にするためには、満たすべき要件が五つある。
専門職はあくまで専門職でなければならない。同時に、事業に対し貢献しなければならない。そして自らが現実に事業に貢献していることを知り、それが何であるかを知らなければならない。
専門職は、専門職としての昇進の機会を持たなければならない。
専門職は、事業に貢献する者として、その優れた仕事や貢献について報酬面でのインセンティブを与えられなければならない。
専門職は、本当の専門家としての仕事を持たなければならない。
専門職は、社内だけでなく、専門家の世界においても一流として認められなければならない。
本文ではこれら5つの要件を列挙した後、それぞれについて解説を加えています。
一つ目の要件について、「専門家の目標は、彼らに対しマネジメント的な視点を与え、彼らの仕事と事業との関連を明らかにする者でなければならない。」とし、それを実現する一つの方法として、「彼ら専門職に対し、本来の専門的な仕事の他に事業全体のマネジメントへの参画を意味するような特別の仕事を与えること」を挙げています。
それは、専門領域で力を発揮する専門職の人たちに対し、自らがその事業へどのような貢献を期待されているのかを理解させることが必要だからです。彼ら自らがそれを理解していないと、自らの専門領域に閉じこもり、他の人たちと対立し頭の痛い問題を生み出す存在になってしまうことになります。
さらにドラッカーは、「専門職に最高の仕事をしてもらうための唯一の方法は、自由に仕事をさせることである」としていますので、自由に仕事をさせつつ、事業に貢献してもらうためにも、事業全体の活動に参加させることが良い方法だということなのです。
二つ目の要件については、いわゆる専門職のキャリアパスということになると思いますが、気をつけるべきは、専門職の昇進としてマネージャーの地位だけしか用意していないケースです。
これについてドラッカーは「優れた専門職を経営管理者の地位に昇進させることは、きわめてしばしば優れた経営管理者を得ることなく、優れた専門職を失う結果となる。」と指摘し、マネージャーへの昇進とは違った昇進の機会を用意せよとしているのです。
それは、例えば上級技師であったり、主任研究員と言った専門家としてのポストで、処遇はマネージャーと同じ権威と重みを持たせるという方法があると紹介されています。
2013/10/13