第二の企業家的機能がイノベーションである。企業は、より優れたものを創造し供給しなければならない。企業にとって、より大きなものに成長することは必ずしも必要ではない。しかし、常により優れたものに成長する必要はある。
イノベーションは、価格の引き下げであっても良い。もちろん、たとえ高くても新しく優れた製品の創造、あるいは新しい利便性や欲求の創造であることもある。さらに、昔からの製品の新しい用途の開発であることもある。
冷蔵庫を食物の凍結防止用としてエスキモーに売り込むことに成功した営業マンは、イノベーションの担い手である。
イノベーションは事業のあらゆる局面で行われる。設計、製品、価格、顧客サービスのイノベーションがある。マネジメントの組織や手法のイノベーションがある。したがってイノベーションもまた、マーケティングと同じように独立した機能と考えてはならない。
イノベーションについては、あらゆる部門において明確な責任と目標が必要である。もちろん、販売、経理、品質管理、人事等の機能別部門は、意識的かつ明確な方向性をもってそれぞれの分野における進歩発展に責任をもつ。しかし同時に、製品やサービスのイノベーションに貢献する責任を持つ。
イノベーションという言葉は、技術革新などと訳されることがあるので、なにか今までになかった新しい発明や発見を指すものというイメージがありますが、ここでもドラッカーはそうではないと言います。
新しい発明を要しないイノベーションの例として、エスキモーに販売する冷蔵庫が取り上げられ、新しい用途の開発もイノベーションだと言っているのです。
そして、経理や人事と言った間接部門に対しても、自部門の仕事だけを見るのではなく、組織全体のイノベーションに貢献せよ、もっと外を見ろと励ましているようです。
イノベーションについては本書から約30年後、1985年の著作「イノベーションと企業家精神」に詳しく書かれています。想定通りの顧客が想定通りに使ってくれるときよりも、想定外の顧客が想定外の使い方をしてくれた方が、「予期せぬ成功」として最もイノベーションにつながりやすいとしています。
2013/5/29