つまるところ、経営管理者の育成とは自己啓発である。
しかし、経営管理者は部下の自己啓発を助けることもできれば、妨げることもできる。したがって、部下の自己啓発の努力を生産的なものにするために、彼らの焦点を正しく合わせさせ、正しく方向付けさせ、正しく実行させるよう責任をもつ。あらゆる企業が、あらゆる経営管理者に部下の自己啓発に関わる挑戦を課す必要がある。
まず第一の仕事は、一人ひとりの人に対するものである。あらゆる経営管理者が、部下のそれぞれが示した実績を分析し、評価することによって、いかなる能力を持っているかを徹底的に考える必要がある。
そして、その分析から二つの問いを発することが必要である。それは、「最大の貢献をなし得る仕事につけているか」であり、「強みと能力を十分に発揮させるためには、何を学ばせ、いかなる弱みを克服させなければならないか」である。
経営管理者育成計画なるものを使うのは、その後の第二の仕事である。それは、明日のマネジメントの仕事や、その要求するものとの関連において、個々の経営管理者の育成をチェックするために使うべきものである。
2年先という短期の育成計画は、実質的には昇進計画であって昇進の人事そのものにすぎない。本当に重要なものは、5年先、10年先のための長期の育成計画である。マネジメントの基本的な目標、組織の構造、経営管理者の年齢構成など基本的な問題を考えなければならないのは、この長期の経営管理者育成計画においてである。
マネージャー育成の方法は、一人ひとりが自己啓発することであり、組織はそれを自己啓発を奨励し、一人ひとりを方向付けすることだという結論でした。
前のセクションで説明されたようにそれは、あらゆるマネージャーを対象としているということですから、それは組織の文化として定着させていかなければならないということです。
すべてのマネージャーがその部下の将来を真剣に考えるという姿勢が、組織全体に浸透している必要があります。
そんなに真剣に優秀な人材をつくることに一生懸命になっていては、本業をおろそかにしてしまうのではないかと言う危惧に対して、「優秀な人材を引きつけられるか否かは、優秀な人材を育てる能力についての評判に正比例する」と説明しています。
そして、人を育てる努力をすることそのものが自らを育てることになるとして、本章を次のように結んでいます。
「経営管理者にとって、明日の経営管理者の育成を期待されることは、彼ら自身の士気、ビジョン、仕事ぶりにとっても重要な意味をもつ。人の成長の助けになろうとすることほど、自らの成長になることはない。それどころか、人の成長のために働かないかぎり、自ら成長することはない。」
2013/8/7