われわれは人の仕事を組織するための方法を知っているだろうか。仕事の統合の意味や原理を知っているだろうか。これらの問いに対する完全な答えはまだない。しかし、いくつかの基礎的な原理は明らかである。
仕事の組織において、問題は要素動作に分解することではなく、それらの要素動作を一つの全体に統合することにある。ここにおいてわれわれはすでにいくつかの原理を知っている。
第一の原理は、仕事はそれぞれひとまとまりの段階として独立させることである。一人であろうとチームであろうと仕事を行う者はその成果を自ら目にすることができなければならない。
第二の原理は、仕事のスピードとリズムは、仕事をしているもの自身の働き方に従って決めることである。仕事はその前段階の仕事とスピードによって左右されてはならない。
第三の原理は、IBM物語が教えているように、仕事はある程度の挑戦、すなわち技能や判断を要する要素を含むものにすることである。
現実の仕事は多様である。仕事によってスキルや判断の程度も大きく違う。しかし一般的には、一人の仕事としてまとめる要素動作の種類は、必要とされる手先のスキルが多いものほど少なくし、必要とされる判断が多いものほど多くすべきである。
ドラッカーはこのセクションで、仕事の要素動作への分解と統合について最高のモデルとして、外科医の仕事を例にあげています。
「外科医の仕事は要素動作への徹底的な分解の上に成り立つ。彼らは数ヶ月をかけて、切開部に相当する小さな空間での糸の結び方や持ち替え方や縫い合わせ方を練習する。その要素動作を改善し、簡単にできるようにし、無駄な動作をなくす。外科医、助手、麻酔医、看護師などの手術チームのメンバーはみな訓練によって次に何を行うべきかを知っている。すなわち外科医は事実上科学的管理法を実践している。」
外科医の仕事は人の命に直結するだけに責任は重く、一般的な企業の仕事とは比べられない感じがしますが、ドラッカーは最高の水準の仕事だからこそモデルとして最高だ、これを手本にすれば仕事は生産的になり、人の仕事としてより適切なものになると述べたのです。
統合の原理として列挙されているのは上記に抽出した記述の通りですが、その前に要素動作への分解と要素動作の改善が必要です。
この部分に対しては、外科医の例でも述べられているように科学的管理法を適用することを勧めています。
2013/9/21