いかなる大きさ、何の大きさをもって企業の規模とするか。最も一般的な基準は、従業員の数である。従業員が30人から300人に増加するならば、組織の構造と行動を変える必要が生ずる。しかし実は従業員の数は、なにがしかの意味はあっても決定的ではない。
従業員の数は多くなくとも、大企業の性格を備えている企業がある。その一例がコンサルティング会社である。コンサルティング会社では200人という規模ですでに大企業である。秘書、事務員を除き全員がトップマネジメントか上級管理者だからである。
逆に従業員の数は膨大であっても、マネジメントの構造と行動については中小企業並みのものがある。その良い例がある水道会社で、従業員は7500人いたがマネジメントは「おもちゃ屋ほどのもので十分」だった。地域独占で競争相手がいない。水道という商品が陳腐化する恐れがない。仕事には高度の技術を必要とするが、アウトソーシング先が仕事をしてくれる。
結局、マネジメント構造の問題に集約され、マネジメントの行動に集約される。そして、思考と計画によってマネジメントすべき領域の大きさに集約される。したがって、マネジメントの構造、特にトップマネジメントの構造こそが、唯一の規模の基準となる。
結論としては、事業を継続していく上で必要とされるトップマネジメントの構造が企業の規模を測る基準だとされました。
中小企業基本法においては、資本金と従業員数を基準として、次のように中小企業と小企業とを定義しています。
企業規模として資本金、従業員数、売上高などを基準とすることが多いのは、それが客観的に測りやすい、線引きしやすいという理由からでしょう。これに対し、ドラッカー基準である「必要とされるマネジメント構造」を基準とした場合には、自らの主観で判断するしかなく、なかなか他から見てもわかりづらいものです。
しかし、ドラッカーが規模を分類するのは、個々の企業がその事業を継続的に社会に価値を提供し続けるためであって、それぞれの発達段階において必要となるマネジメント構造をしっかりと作っていく必要性から、この分類基準を考えたものだと思います。
2013/8/24