手出しはさせない

ギグがお店で食い逃げばかりするので、リタリーのお店は儲けが出なくて、このままだと潰れてしまうかも知れないそうです。ぼくは、ギグの相棒として、なんとかしないといけません。ぼくが代わりに働くからギグを許してあげて、と言うと、リタリーは、じゃあ、夜にもう少しだけ、働いてもらえますか、と言いました。もう少しだけなら頑張れると思って、ぼくは頷いてしまいました。

翌日、一緒に働いているお姉さんを帰らせて、暗くなったお店で、リタリーはぼくに、奥の部屋で待っているように言いました。ぼくは、何をしたら良いんでしょう。それに、こんな部屋、見たことありません。粗末なベッドと毛布がある以外、何もない部屋です。寝泊まりするには、ちょっと嫌だなと、ぼくは思いました。

ぼくはベッドに腰掛けて、リタリーがやって来るのを待ちました。十五分くらいすると、とんとん、とノックの音がして、リタリーが、誰かわからないおじさんを連れて、やって来ました。

「どうぞ」

リタリーに促されて、中に入ってきた人には、見覚えがあります。何度かお店に来てくれた人、だと思います。名前は、わかりません。クラスターさんと同じくらいの歳の、仕立ての良い服を着た、穏やかそうな人です。

「では、一時間後にまた」

リタリーは、おじさんを部屋に入れて、それだけ言うと、出ていこうとしました。何をしたら良いのか、ぼくはまだ聞いていません。立ちあがって、慌ててリタリーを呼び止めます。

「えっ、リタリー、ぼく、どうしたら良いの」

「……大丈夫ですよ、その方に全部任せていれば」

リタリーは、ぼくにそう言うと、ばたんと扉を閉めてしまいました。どういうことなのか、ぼくには全然わかりません。よく知らないおじさんと、急に二人きりにされても困ります。入ってきたおじさんは、呆然とするぼくの肩を優しく掴んで、一緒にベッドの上に腰を下ろしました。優しそうな人だけど、ぼくは一体何をしたら良いんでしょう。

「あの……」

思い切って声をかけると、おじさんは笑って、

「きみ、可愛いね」

と、ぼくを褒めてくれました。可愛いと褒められるのは嬉しいけれど、その顔はなんだか、少し、不安になります。

「え、あの、その……ひゃっ」

何を言ったら良いのかわからずにいるぼくの太ももに、おじさんの手が触れて、ぼくは驚いて大きい声を出してしまいました。そのまま、その手はぼくのスカートの中に伸びていきました。たまにからかわれてめくられることはあるけれど、スカートの中に手を入れられたことはありません。ぼくは驚いて、動けなくなってしまいました。

「一時間、たっぷり可愛がってあげるからね」

おじさんはそう言って、スカートの中をまさぐって、内股を撫でたり、ぼくのエプロンを解いて、ブラウスの中に手を入れたりしました。よくわからないけれど、ぼくの体を触るのが、おじさんは楽しいみたいです。誰かに触られたことのない場所ばかり撫でられて、ぼくはいつの間にか、息が荒くなっていました。

ただ撫でられているだけ、という場所と、なんだかむず痒くて、ぞくぞくして、勝手に声が出てしまう場所があって、おじさんはぼくが声を上げてしまう場所ばかり、いやらしい手つきで触りました。その度に、可愛いと言ってぼくを褒めてくれます。

ぼくは気付いていませんでしたが、いつの間にかぼくのそこが固くなっていたみたいで、おじさんは嬉しそうにそれを触りました。そんな汚いところを触られてしまうなんて、なんだか怖くなってしまって、ぼくの目から勝手に涙が溢れてしまったのですが、おじさんは溢れた涙を舐め取りながら、可愛い可愛いと言っています。この人は、もしかしなくても、おかしい人なんでしょうか。

涙が止まらないのは変わりませんが、おじさんがぼくのそこを弄る度に、ぞくぞくして、もっと触って欲しくなって、勝手に声が出てしまいました。

「気持ち良いの?」

「あっ、あ、わから、ない、です……」

「……そう、可愛いね」

この感覚を気持ち良い、と言うんでしょうか。ぼくが知っている「気持ち良い」と言うのは、お風呂に入った時とか、そういう時に感じるもので、こんな感覚は知りませんでした。乳首に触られた時に感じたのも、「気持ち良い」だったのかも知れません。

おじさんがそこを擦る度に、ぼくはどんどん気持ち良くなって、頭が真っ白になって、なにも考えられなくなっていきました。

気が付くと、ぼくはあまりに気持ち良すぎて、くらくらして、おじさんに抱きとめられていました。おじさんの掌に、白い液体がついていて、それはどうやらぼくが出したものらしいです。おじさんはそれを嬉しそうに舐め取って、ぼくの額にキスをしました。

「また来るね」

そう言って、ぼくの乱れた服を正してくれてから、おじさんは部屋を出ていきました。何をされたのか、ぼくには良くわからないままでしたが、「また来るね」というおじさんの言葉を思い出すと、なんだかいけないことをした気がします。

ぼくは何もしていないのに、なんだか物凄く疲れてしまいました。固いベッドに体を沈めると、寝心地は全然良くないのに、そのまま眠ってしまいそうです。でも、寝ちゃダメです。少しだけ休んだら、リタリーに、ちゃんと聞かなきゃ。これで良かったのか、ぼくにはよくわからないからです。

これで、本当に、お金になるのかなあ。これでギグの食い逃げの分のお金になって、お店がちゃんと続けられるなら、これくらい、我慢できると思います。だけど、なんだか……やっぱり、おかしいような気もします。

ぼくは静まり返った部屋の中で、少しだけ、泣きました。

続く