慰めてよ
本当は、あの愛しい相棒にこうされたいのだとわかっている。それでも、相棒を力づくで奪うほど冷酷になれなくなったこの腑抜けた死神は、同じく彼に恋をしたくたびれた私に、夜毎慰めてもらいにやって来るのだ。
ランプの明かりが揺らめき、ギグのはしたない姿を照らし出す。ベッドの上で大きく脚を開いて、すっかり慣らされて緩んだ穴を自分で広げながら、死神は私に懇願した。
「早く……もう、とっとと入れてくれよ」
「……もっと可愛らしくおねだり出来ないんですか、貴方」
ため息を一つ吐いて、仕方ないという振りをしながら、私はギグの中に侵入した。温い死神の体温と、ぬるついた感触。気持ち良さそうに息を吐くギグの口を自分の唇で塞いで、私は乱暴に腰をぶつけた。
一人暮らしの私の家では、誰かに遠慮する必要もない。ギグがどんなに大声で獣のように喘ごうが、私がどんなに卑猥な言葉で辱めようが、誰かに聞かれる事はない。
私の腹の下で、もっと奥まで入れろ、気持ち良くしろと、ギグはまるで狂ったように、半ば喘ぎながら叫んだ。今日は余程嫌なことがあったらしい。大方、相棒と話をして、酷く惚気けられたとか、そういうつまらない理由だろう。
当たり前だが、今私が抱いているのは彼ではないし、今ギグを抱いているのも彼ではない。そしてお互い、悲しいくらい、彼とは似ても似つかない。その癖、今触れているのが彼であったらどんなに良いかと互いに思っているのだから、どうしようもなかった。
代わりになれないとわかっているし、代わりになるつもりもない。ただ、手近な同類が互いしかいなかったから。それだけの理由で、私たちはこうしている。
ギグが何度目かの射精で脱力した時、後ろから責め立てていた私は、耳元でこう囁いた。
「ねえ、もう、諦めてしまいませんか」
それを聞いたギグは、蕩けた顔のまま、冗談言うな、誰がてめェなんか好きになるかよ、と、吐き捨てた。そういうつもりで言った訳じゃないのに、ギグは何か勘違いをしているらしい。なんだか可笑しくて、可愛らしくて、私は笑った。
私だって、貴方のことを好きになるつもりなんてありませんよ。そう返事をする代わりに、私はいったばかりのギグの腰を掴み、尻を高く上げさせ、より深く、奥の方まで貫いた。
終わり
wrote:2015-09-24