えっちなあの子にご用心

始めの頃は随分と恥ずかしがっていた癖に、今となっては随分と大胆になったものだと、少しだけ残念な気持ちになりつつ、なんて素敵なのだろうとも思っている。ランプの橙色の明かりに照らされながら、ベッドの上の私の上に股がり、自分の良いように腰を振って快感を貪っている彼を見ていると、苛めたくて仕方が無くなった。

手を伸ばして、だらだらと涎を溢す陰茎を擦ってやると、彼は背を仰け反らせて、悲鳴のような声を上げた。中に入っている私のものを締めあげて、もっともっとと強請っている。

上半身を起こして、彼の細い腰を抱き寄せる。つうっと背筋をなぞってやると、それだけでまた、彼は気持ち良さそうな吐息を漏らした。私に触られる度に、目で見える部分だけでなく、繋がっているそこも反応するのが厭らしい。

「そんなに気持ち良いことが好きですか」

汗で濡れた頬を撫でながらそう言って、啄むようにキスをすると、彼は嬉しそうに私の肩に手を回した。くっつきたくて仕方ないと言った様子に嬉しくなって、深く口付けて彼の甘い舌と唾液を吸う。

「んっ……うん、好き、もっと……して」

可愛い恋人がキスに応じながら、そんなことを言ってくるとあれば、望みを叶えずにはいられない。

「全く、仕方ない人ですね」

蕩けた顔の彼を、繋がったままベッドの上に押し倒し、大きく足を開かせた。ああ、なんてはしたない。一体誰にこんな風に仕込まれたんですか。言ってご覧なさい。犯人が自分自身だと知っていて聞いてやれば、彼は私の名を呼んで、早く気持ち良くして、いかせて、お願いだから、と狂ったように叫んだ。

「……仰せのままに」

自分で言わせておいて、そんな恭しい返事をするなど馬鹿げている。これからする行為を考えれば、それは本当に、小芝居でしか無いのに。

彼の願い通りに、良いところを執拗に擦り上げて、限界だと言われても止めずにいかせてやると、そのうち彼は意識を失ってしまった。流石に反応が無い相手に欲を吐き出すのも気が引けて、私はゆっくりと自身を引きぬいた。随分と長く挿入していたせいで、彼のそこは閉じきらずにひくついている。潤滑剤と体液で濡れたそこに、私の精液も注ぎ込んでやりたかったのだが、彼が満足するまでは、と我慢し続けていたせいで、完全にタイミングを逃してしまった。

自身が吐き出した精液で、既に彼の下肢はどろどろに汚れている。それだけ見れば、まるで私に犯されたよう。でも残念ながら、私のそこはまだ一度も達していなかった。

病みつきになってくれるのは嬉しいですが、貴方よりも体力のない私にばかり、頑張らせないで欲しいですね。

ため息をついて、私はそっとベッドを下りた。互いに汗だくだし、このままだと体を冷やしてしまう。ひたひたと足音を立てないように、寝室の扉に手をかけた。

「……どこ、いくの」

背後からかけられた声に驚いて振り向くと、不安げな顔をした彼がこちらを見ていた。さっき意識を飛ばしたばかりなのに、もう目を覚ましたのか。

少し離れるだけで、そんな顔をしなくたって良いだろうに。そんなに好いてくれるのは嬉しいし可愛いけれど、後ろ髪を引かれて辛くなる。

「タオルを取ってくるんですよ。このまま寝たら、風邪引いちゃいますから」

言い聞かせるように言うと、彼は外見に似合わぬ淫靡な顔で笑った。

「ねえ、待ってよ……まだ、足りないよ……」

「えっ」

驚く私に向かって、彼は自分で足を開き、つい先刻まで私を咥え込んでいたところを自分の指で拡げて見せた。

「リタリーはまだいってないでしょ……続き、しよ?」

そこまでされて続きをしない男がいたら顔を見たい。翌日の店のことなど頭の中から吹き飛ばし、私はもう一度、彼の中へと自分自身を捩じ込んだ。

終わり

wrote: 2016-03-03