薄暗い未来

とんとん、という控えめなノックの音。続いて、かちゃりとドアを開けて入ってきた少年の、居た堪れなさそうな表情に、私は背筋がぞくぞくした。

「おはよう、ロド」

私の挨拶には返事をせずに、このセプーの少年は私の側まで、ゆっくりと歩いてくる。足取りが重いだけで、寝ぼけている訳ではない。彼は今日も、朝の日課になっている「ある事」をするために、私の下へやって来ただけなのだ。

胸元をおさえながらよろよろと歩くロドを見て、私はベッドの縁へと腰を下ろした。歩きながら、我慢できないといった様子で、ロドは着ているシャツのボタンを外し始めた。少しずつ露わになる胸元。子供らしい白い健康的な肌。ボタンを全て外し切ると、ロドはシャツを脱ぎ捨てて、私の膝の上に跨った。

「ああ……もう、こんなに張ってしまったのか」

「ん……苦しいから、早く」

少年らしく細い体。それに不釣り合いな、小さいながらも女の子のように膨らんだ胸。その天辺にある乳首は、少年らしさとはかけ離れ、ぷっくりと赤く充血して存在を主張している。その先端からじわりと白い液体が滲んで、今にも溢れそうになっていた。

「んんッ……」

急かされるまま、果実のように熟れたそれを口に含む。軽く吸ってやれば、たちまち口の中に乳臭さが広がった。始めは優しく、慣れてきたら胸を揉みながら少しきつく吸う。溢れ出てくる温かい乳を飲み下して、それが最近の私の朝食代わりにさえなっていた。

男の子なのに、当然妊娠している訳でもないのに、ロドの胸からは乳が出る。初めのうちは手で絞ってやっていたのだが、口で吸ってやらないと、昼ごろにはまた胸が張って苦しいらしい。ならば仕方ないと、朝にこうして吸ってやることにしていた。療術師に見せても良いのだが、それは恥ずかしいから嫌だと言う。見たところ健康的には影響がないようだし、私にも療術の心得が無いわけでもない。だから仕方なく……そう、仕方なく、こうしている。

荒くなる呼吸を必死に噛み殺しながら私の頭にしがみついて、そんなロドはとても可愛らしいのだけれど、やはりなんというか……背徳感が胸を過ぎってしまう。母乳を吸われながら彼は確実に快感を感じていて、それが私の胸に当たる固いものでわかってしまうのが、余計に。

けれど、それを口にしたらいけないと、必死になって気付かない振りをしている。これはあくまでも、胸が張って苦しいロドを助けるためにしていることであって、この行為に対して、互いに興奮しているだなんてことは、認めてはいけないのだ。

「……ほら、こっちも」

「ぅ、あっ、あ……」

右の乳を吸い終わって、次は左。右の方を吸っている間に少し溢れてしまったらしく、先端からぽたぽたと雫が落ちている。汚れた胸を舐めて綺麗にして、私はようやく左の乳首に吸い付いた。軽く吸っただけで勢い良く溢れ出てくるそれを、どくどくと飲み下しながら、右乳を柔く揉んでやる。吸いきれなかった残滓が、私の指を汚した。

意地悪をしてやろうと何度思ったか知れない。この、女のように膨らんだ乳首を甘く噛んで、固くしているそこを刺激して、この少年を蕩かしてしまえたら。

左の方が感じるらしいと気付いてからは、焦らすようにこちらを残してしまっていた。腰が跳ねて、私の胸に固いものを押し付けて、全身をびくびくと震わせるロドが、あまりに厭らしくて、これを毎朝毎晩見せつけられて、我慢出来ているのが不思議なくらい。

「……終わったよ、ロド」

「ん……」

とろんとした上気した顔のロドは、腰が立たない程になっていて、くたりと私に体を預けた。熱くなった体温を抱きしめて、背中をよしよしと撫でてやる。

今はまだ良い。でももし、そのうちロドが成長して、この開発されきった乳首を吸われるだけで絶頂してしまうようになったなら。きっとこのままではいられなくなってしまうに違いない。

それが早いか、私が我慢しきれなくなるのが早いか。どちらにしろ、私達の未来は暗かった。

終わり

wrote:2016-09-08