必然の出会い

一緒に八百屋で買ったホタポタにかじりつきながら歩く帰り道。どうして俺とギグってこんなに似てるんだろうと、相棒はぽつりと漏らした。

互いに好きな食べ物は同じで、苦手なものも同じ。身長も、体重も、体格も、何もかもがそっくりで、顔立ちと性格だけが違う。こんなに似たような相手と出会って、その違いなんてどうでも良くなるくらいに気が合って、惹かれ合うだなんて、何か大きな力が働いてるとしか思えない。でも、そんな非科学的なことなんてある訳ねェしな。

「んなの、偶然だよ」

「そうかな? 偶然にしては、出来過ぎてるよ」

出来過ぎ。確かに、そう思ってもおかしくないくらいだ。奇跡と言っても良い気がする。

相棒と巡り合い、幼馴染として生まれ育って――ここまではきっと奇跡みたいな偶然の重ね合わせだ。でも、一生の殆どを一緒に過ごしたこいつと、同性とはいえ付き合い始めたのは、きっと偶然なんかじゃない。なるべくしてなったことだと思う。

アパートの階段を登っている相棒の背中がぴたりと止まり、どうしたのかと思う俺の方を向いた相棒は、何かを懐かしむような笑みを浮かべて、夕暮れ時の空を見上げた。

「……たまにね、夢を見るんだ」

「何をだよ」

「何処かよくわからない森の中で、ギグと二人で草原に寝そべって、空いっぱいに広がる星を眺める夢だよ」

「それって……」

似たような夢なら、俺も見たことがあった。時代も何もわからない、少なくとも今のような学生服なんかじゃない、よくわからない服を着ている相棒と、何を話すでもなく、空を見る夢。それは青空だったり、今日みたいな夕焼けだったりしたが、共通しているのは、その夢を見ると、とにかく幸せな気分になるということだった。

「前世の記憶ってやつかなあ」

呆けた顔の俺を見て、いつも通りの無邪気な笑顔に戻った相棒が、茶化すように言う。前世。そんなの、にわかには信じがたい話だけれど、もしそんなのがあるとしたら、きっと大昔から俺たちはこうなる運命だったってことなのか。

非科学的なことは信じないとは言ったものの、いつか見たかも知れない夕焼けに照らされていると、それもまあ、悪くないと思った。

「ねえ、今日はうちに来る? そっちに行く?」

「そうだな……」

昨日はそっちだったから、うちにするか。前を歩く相棒の背中を追って、そんな適当な会話を続けながら、俺は覚えてもいない遠い昔の空を、ほんの少しだけ思い出していた。

終わり

wrote:2016-03-31