少年の幸せ

おれは、ギグのことが好きみたいだ。でも、どうして好きになったのかは、どうしても思い出せない。どうしたらギグが気持ち良くなるのか、良くわかっているつもりなのに、どこでそれを知ったのかはわからない。

そんな風に、おれには思い出せないことがたくさんあって、でも、それをギグに尋ねるのはおかしい気がして、言い出せなかった。

でも、ギグはおれに、自分のことが好きか、幸せか、何度も何度も尋ねる。その度、好きだよ、幸せだよ、と答えるのだけれど、どうしてそんな当たり前のことを聞くのか、不思議だった。

ある時、ベッドの上で、おれからも尋ねたことがある。

「ギグも、おれのこと、好き?」

「……ああ、わかってんだろ?」

「うん」

「じゃあ、良いじゃねェか」

「……そうだね」

ギグの言うことは絶対に正しくて、間違いがあるはずないのに。何か隠し事をしているみたいに、ギグは会話をすぐに切り上げた。この先はなんだか聞いてはいけないことのような気がして、おれは何も言えなくなった。

それ以来ずっと、ギグは幸せなの、って、それだけは、聞けないでいる。

終わり

wrote:2015-09-15