ぼくも食べたいのに

寝る前にベッドの上でうつ伏せになり、だらだらと本を読んで過ごしていると、決まって相棒はオレの背中に馬乗りになり、かまってかまってと騒ぎ始める。それはまだいい。気のない返事を返していると、相棒はオレの背中から尻の方に身体をずらして、さわさわと揉み始めるのだ。正直、たまったものではない。そういう趣味はねェよ。

「おい、やめろよ相棒」

「どうして? いつもギグがしてくれることでしょ?」

「そうかも知れねェがな……」

流石に、オレの胸くらいまでしか身長のない、可愛い相棒にされてしまうのは、男としてどうかと思う。完全に小児性愛者と言われても仕方ないことをしている癖に言うのも何だが。

「ほら、どいたどいた」

相棒をどかしながら仰向けになって、腹の上に相棒を乗せた。不満そうな顔でむくれる相棒は、身を屈めてオレの顔に迫る。

「どうして、ぼくはしちゃいけないの」

「どうしてって……相棒にはまだ早いんだよ」

「ぼくが大人になれないって知ってる癖に」

「う……」

確かに、成長も老化もしないこいつに、「もう少し大きくなったら」という先延ばしの言葉は通用しない。駄目な理由なんて、単にオレが嫌だからという自分勝手な言い分しかない訳で、諦めさせる都合の良い魔法の言葉なんて有りはしないのだった。

相棒はオレの手を取って、指先に軽く何度か口付けると、切なそうな顔でこちらを見た。

「ぼくはこんなにギグのことが好きなのに」

そんなことはわかっている。オレが相棒を大切に思っているのと同じくらい、相棒もオレのことを好きなことくらい。だったらオレも覚悟を決めるべきなんだろうか。

「ねえ、良いでしょ? もう、我慢出来ないよ」

相棒はそう言って、着ていた服を脱ぎだした。ちょっと待て、本気か。

「待て待て待て、今からかよ」

「だめ?」

「駄目っつーか、なんつーか」

そんなに可愛く唇を尖らせて尋ねるな……いや、そうじゃなくて、なんというか、心の準備というものがだな。

「痛くしないから」

「そういう問題じゃねェんだよ」

「じゃあなんで?」

「は、恥ずかしいだろ……灯りくらい消せよ」

「……あ、そうだよね。ごめんね、ギグ」

何言ってんだオレは。完全に承諾したみたいな返事じゃねェか。オレの馬鹿。

相棒はベッドから下りて、サイドテーブルの上のランプを消した。窓から差し込む月明かりが、妙に浮足立った相棒を照らす。ああ、どうしよう。これで「やっぱり駄目だ」なんて言ったら、絶対口を聞いてもらえなくなるよな。

改めてオレの上に覆いかぶさった相棒は、酷く嬉しそうに、オレにキスをした。

終わり.

wrote:2015-08-23