平成9年度東洋大学東洋学研究所事業報告
平成9年度東洋大学東洋学研究所事業報告
東洋大学附置東洋学研究所は、本学学祖井上円了の建学の精神――すなわち、欧米思想研究の成果を踏まえつつも、啻にひたすら追従す ることなく、その関連のもとに東洋思想を解明せんとすること――に則り、昭和33年の設立以来、当研究所に所属する各研究者が各自の専門の立場から研究を重ね、その成果について総合的な視野のもとに討究してまいりました。
こうした学祖の精神は、平成6年度よりたてられた研究テーマ、すなわち
・東西宗教文化の比較研究
・日本宗教文化の総合的研究
に基づく研究計画に引き継がれ、この研究計画は現在もなお継続されております。そして、この研究計画のもとに研究所員、研究員、客員 研究員合わせて総勢60名ものスタッフが活発な研究活動を展開し、その成果の一端はこの度上梓いたします本紀要に収められた論文の中 にもご覧いただけることと存じます。
本年度は左記の彙報欄にもございますように、7回の研究発表例会を開催し、発表者と参会者との活発な討議がなされました。こうした 討議により、発表者には今後の研究における指針がもたらされ、参会者には大きな啓発となったことと存じます。そして学外の研究者をお招きしての公開講演会も2回行われましたが、学外一般からの熱心な参会者も交えながら、活発な質疑応答、講演会終了後の簡素な茶話会での和やかな懇談のうちに幕を開じました。
また今年度は、韓国精神文化研究院・韓国学大学院教授の丁海昌博士を客員研究員として当研究所にお迎えし、河波昌研究所員をはじめ とする研究所員・研究員らと実り豊かな対話がなされました。こうした対話の積み重ねにより各国の研究者間の相互理解がいっそう深まる ものと確信しております。 今後も、海外からの研究者をお招きし、研究発表・討議の場を設け、より活発な研究交流の場として、当研究所 での研究活動を推進していきたいものでございます。
なお、国内外研究機関との交流をよりいっそう密にし、より活発な学術交流を進めていくことが、研究所活動の活性化を図る上でも重要な課題となります。この課題に対しては各研究所員・研究員が積極的に学術交流を重ね、一歩一歩着実な地盤整備がなされております。当研究所の更なる進展のためにも、研究所員・研究員の努力は言うまでもありませんが、皆様方のご批判やご叱正を賜れば幸甚でございます。つきましては、今後共ご教示・ご指導の程宜しくお願い申し上げる次第でございます。
〈彙報〉
研究発表例会
5月24日 経集部経典群に見られる初期大乗思想 河村 孝照 研究所員
御斎会について――『江次第抄』の記事の復元を中心として―― 榎本 榮一 研究員
ジャータカ(Jātaka)における菩薩行―特に施波羅蜜多を中心として―― 祖父江 章子 研究員
6月14日 堀辰雄における宗教的感性 竹内 清己 研究所員
あゆひ抄の言語分類と言霊 根上 剛士 研究所員
9月20日 修験道資料について 中山 清田 研究員
北欧精神史における古層の問題―北欧中世と日本近世におけるキリスト教受容を比較して―― 中里 巧 研究所員
10月25日 ヨーガ行法と「癒し」 番場 裕之 研究員
『成唯識論掌中枢要』における種性論 橘側 智昭 研究員
十返舎一九における「しゃれ」 中山 尚夫 研究所員
11月29日 『俱合論』におけるprajñā - ――Yaśomitra著Sphoṭārthaのabhidarma-語義解釈をめぐって―― 渡邊 郁子 研究員
西蔵訳『一万頌般若経』に見られる九分教、十分教、十一分教について 林 純教 研究員
『菩提心論』における三摩地について 真柴 弘宗 研究所員
12月13日 シャンカラ著『バガヴァッド・ギーター註』における聖典解釈と、思想の表明 高木 健爺 研究員
中世仏教者における神祗観 鈴木 善鳳 研究員
インド密教文献における文化的記述 島田 茂樹 研究員
1月17日 アビダルマ仏教における見の意義について―見の持つ意義は何か― 遠藤 信一 研究員
『今昔物語』天竺部をいかに読むべきか 岡本 嘉之 研究員
道元とヤーコプ・ベーメ――真理観の比較―― 笠井 貞 研究所員
公開講演会
7月26日 西行の宗教者像 坂口 博規 氏(駒澤短期大学教授)
1月31日 鈴木大拙と西田幾多郎――大悲から当為へ―― 竹村 牧男 氏(筑波大学教授)