日本宗教文化の総合的研究
日本宗教文化の総合的研究
研究調査活動
研究課題「近世中・後期文学に見る雅俗」における文献調査と実地踏査
中山 尚夫 研究所員
期間 平成12年3月7日〜3月10日
調査地 大阪・京都
近世文学における仏教的記述を探る、という目的で、井原西鶴、近松門左衛門(共に大阪)、上田秋成(京都)の墓所を参拝した。特に西鶴の『日本永代蔵』を中心とする町人物浮世草子における宗教的記述確認のため、京都・大阪の数ヶ所の寺社を踏査した。具体的には左記の通りである。
水間寺(大阪府貝塚市)・住吉大社(大阪市)・北野天満宮(京都市)
又、西鶴の俳書調査のため、大阪府立図書館で俳書数点を閲覧した。
儒教全盛時における町人社会の神仏信仰は、中世迄のそれとは大きく異なることを尚、実地踏査により証明したいと思う。
研究課題「北陸の宗教と文学」における実地調査
竹内 清己 研究所員
期間 平成12年3月16日~3月20日
調査地 丸岡の中野重治記念館 他
①富山県中新川郡上市町南町43の常福寺は、浄土真宗大谷派。住職との面談を得て、立山信仰と海岸の滑川地方、上市地方、立山地方の生活と宗教について知識を得た。また、公民館・生涯学習・図書館で研究。②大島町に浄土真宗本願寺派円広寺、竹内良医の碑と日蓮宗の碑と地蔵祭について「大島村史」をひもとく。富山のいたち川と宮本輝「蛍川」の踏査。③三国の高見順生誕地。曹洞宗金鳳寺に立ち寄り、住職小澤和順氏と面接。観音堂と聖観世音菩薩と海上出現日和山観音菩薩略縁起。さらに高見順と母古代について。龍翔館に立ち寄り、三国と江戸北回り船の事績。三国と近代文学。高見順文学碑、三好達治詩碑を巡って東尋坊へ。④福井の佐佳枝神社。丸岡城。円光寺。中野重治文庫と中野重治生家まで名作「梨の花」に記述にそって歩く。生家後踏査。⑤武生市の総社大神宮、国分寺に越前の国府の事跡。紫式部公園の寝殿造、日野山(武生富士)信仰。式部の少女時代の体験と「源氏物語」との関係を知る。⑥王子保村公民館。国兼村の天台真盛宗常光寺、住職の坂川観晃氏と面接、如意輪観音の所縁、東京の縁者からの観音寄進。また、大塩八幡宮を拝する。
北陸における人々の死生観を浄土真宗、禅宗、日蓮宗をめぐってうかがい、またそこで生起した文学の風土の一端を知る調査となった。
研究課題「和歌史の基礎研究」に基づく調査研究
神作 光一 研究所員
期間 平成12年4月28日〜5月2日
調査地 京都・宇治・琵琶湖・武生市(福井県)
京都では、石山寺、城南宮を中心に、紫式部および「源氏物語」の植物を調査し、研究文献を収集した。次に宇治では、三室戸寺の浮舟の碑、源氏物語ミュージアム、平等院を廻り、それぞれ平安文学、和歌史との関わりを調べた。
さらに、琵琶湖周辺の三井寺、歌枕としての打出浜、唐崎、浮御堂を訪ねた。合わせて「近江百人一首」の背景を丹念に実地踏査した。
続いて武生市へと移動し、紫式部公園、日野山、日野川を歩いた。主として「紫式部集」をめぐる検証のためであった。そして「万葉のふるさと、味真野苑」を訪れ、中臣宅守と狭野茅上娘子との悲恋の歌の背景を調査し、考察した。それぞれの所で、和歌史に関する有力な資料を入手することができた。
研究課題「江戸時代における雅俗融合文化について」に基づく研究調査
中山 尚夫 研究所員
期間 平成12年8月8日〜8月11日
調査地 奈良・伊勢・名古屋
・井原西鶴の『西鶴諸国ばなし』をはじめとした浮世草子に出る奈良の東大寺、西大寺〈跡〉を中心として、浮世草子に奈良の寺院がどのようにとらえられているか、ということをテーマとして、実体(態)とその描かれ方を比較するために右記他数力所を廻り調査した。
・十返舎一九の『東海道中膝栗毛』五遍追加に描かれた弥次喜多の伊勢参宮の模様を実地見学することにより、裏付けを行った。内宮前に出来た″おかげ横丁″の一角で19の自筆扇面を思い掛けなくも日にすることができ有り難かった。
・名古屋蓬左文庫において、文献調査を行った。
研究課題「和歌史の基礎的研究」に基づく調査と資料の収集
神作 光一 研究所員
期間 平成12年8月16日〜8月20日
調査地 長野県の佐久平および軽井沢周辺
佐久平では、女流家人杉浦翠子氏の遺族宅や別荘跡を訪ね、全歌集、「芸術至上主義」(歌誌)、書簡などを頒けていただいたり、コピーをとらせていただいたりした。
また、軽井沢周辺では、町立資料館、図書館、市村記念館、高原文庫、堀辰雄記念館などを訪ね、杉浦非水、杉浦翠子、片山広子などに関する基礎資料を調査し、収集した。
合わせて、歌碑のある所を訪ね、その関連資料を集めることもできた。
研究課題「北海道における宗教文化の定着と受容」調査
竹内 清己 研究所員
期間 平成12年8月21日~8月25日
調査地 稚内北方記念館、礼文町郷土資料館など
札幌から道北へ、宮沢賢治の「オホーツク挽歌」、中野重治「北見の海岸」、井上靖「魔の季節」など文学資料をたずさへ、寺社をめぐった。稚内北方記念館の先史遺跡、江戸年間建立の宗谷厳島記念、護国寺(浄土宗)、山岳神の利尻山神社、礼文町の会津藩士北方警備跡、郷土資料館など、樺太と北海道の出入口の宗教文化の一端に触れ、有意義であった。
研究課題「室町前期における飛鳥井家の動静と文芸活動の研究」に基づく研究調査
千艘 秋男 研究所員
期間 平成12年8月24日〜8月27日
調査地 大阪・京都
室町時代前期に活躍した飛鳥井家の人々に関する文献調査と資料収集を行うために、大阪の古書肇・大阪天満宮文庫、京都の特殊文庫・京都大学附属図書館・思文閣出版・古書肆(文藻堂)等を訪問した。
本研究は前年度からの継続研究であり、飛鳥井家の人々とその文芸活動を総合的に研究するための基礎資料の整備を目指している。今回も、飛鳥井雅世を中心に、父雅縁、子息雅親・雅康等に関する「家集」の伝本調査と懐紙・短冊類の資料収集を行った。具体的には「飛鳥井雅世集」の疑間点の解明と再確認とに重きを置いた。
雅世の自筆資料としては、三首懐紙、一首懐紙、短冊等を調査した。併せて、雅親・雅康・雅俊・雅春等の懐紙、短冊、関連資料等をも調査・収集した。
特に、雅世の短冊詠「祝 あふけ猶万代かけてさかふへき やとのめくみも神のまに、、」は、署名が「雅清」とあるから、雅世の若年時の詠歌の1つとして貴重であり、その内容を確認し得たことは大きな収穫である。
研究課題「草木成仏について」に基づく研究調査
伊藤 宏見 研究所員
期間 平成12年8月28日~8月30日
調査地 高野山大学図書館及び密教文化研究所、奥の院、九度山慈尊院など
28日、高野山着。中食をとり、大学の奥にある修行所をかねた密教文化研究所の1部、目下夏期50日の四度加行の様子を見て、遍照光院寄託托本、釈摩訂訶衍論の文献、中国〜日本、中世までの6種の古写古版本の注目すべき点をノートに収める。29日も引き続きおこなう。のち草木成佛についての未収録の文献および、コピーをとる。30日、蓮花谷と蓮花三味院の宝物、平安時代の浄土図(特有なもの)を拝見、明遍上人の付属物たりしことなど。その他、中世の石造品層塔などをみる。のち奥の院参道にみる廟杉が、草木成佛の元祖といわれる空海の密教とその実像に迫ることを暗示していることなどを思索し、下山し、九度山へ、慈尊院へ、ここから旧高野街道の町名(史跡)が始まり、高野山金堂までを辿ることなど、を知る。
研究課題「江戸時代における雅俗融合文化について」に基づく研究調査
中山 尚夫 研究所員
期間 平成12年9月7日~9月10日
調査地 大阪・京都
・雅俗融合の文学として、もじり百人一首を研究テーマの1つに置いているので、本歌である″小倉百人一首″に因んだ地を実地踏査した。京都嵯峨の″小倉百人一首″の遺跡ともじり百人一首の最初である「犬百人一首」が編まれたと想像される南禅寺周辺を調査した。殊に″小倉百人一首”成書者である藤原為家の墓所(伝)が見られたのは収穫であった。
・雅俗融合の文学作者として上田秋成は重要な人物である。京都西福寺において彼の墓を見学、御住職の御好意で秋成に関する資料数点を拝見できたことは大変有意義なことであった。
・大阪において″小倉百人一首″に詠まれる住吉神社周辺と、井原西鶴、近松門左衛門の墓に詣でた。
研究課題「室町前期における飛鳥井家の動静と文芸活動の研究」に基づく研究調査
千艘 秋男 研究所員
期間 平成12年11月17日〜11月20日
調査地 島原・福岡・太宰府
飛鳥井雅縁・雅世父子を中心に、その動向と文芸活動に関する文献調査と資料収集のために、島原図書館(館内の「松平文庫」)、福岡の九州大学中央図書館、太宰府天満宮文庫、古書津肆、個人等を訪問した。
島原図書館では、特に雅世の「家集」の再調査および「百首」詠の調査と資料収集を行った。
九州大学中央図書館では、「支子文庫」に雅世の「十首詠」が所蔵されていることが判明した。この資料は、今日知られている「飛鳥井雅世集」等には見当たらないので、雅世および作品研究に資する貴重なものと思われる。今回は調査のための十分な時間が得られなかったので、後日精査して内容の解明を行いたい。
太宰府天満宮文庫では、主に中世の和歌および連歌資料の調査と資料収集を行った。今回は飛鳥井家の人々の文献資料調査よりも、三條西実隆・公條父子の両吟で、天文2年6月7日に開催の「和漢聯句」を中心に、宗祇・兼載等の連歌関係の資料調査および収集を行った。
研究課題「和歌史の基礎的研究」に基づく調査
(歌枕及び風土の実地踏査と、日本文学関係の資料収集)
神作 光一 研究所員
期間 平成13年1月4日〜1月8日
調査地 福山・大牟田・唐津・小郡
福山では、井伏鱒二、木下夕爾関係を調べ、さらに万葉集以来の歌枕として著明な鞆の浦の実地踏査をした。
大牟田では、かるた資料館の諸資料を収集し、唐津へと向かった。
唐津では、松浦佐用姫伝説に関わる万葉の頃からの鏡山、松浦川、玉島川などを調べ、さらに近代詩歌との関わりで、蒲原有明、斎藤茂吉、北原自秋ゆかりの各地を訪れた。さらに小郡では中原中也、種田山頭火関係の資料を収集し、その上で、ゆかりの地を丹念に実地踏査することができた。
以上、基礎的な研究という点でかなりの収穫のある出張であった。心から感謝している。