東西宗教文化の比較研究
東西宗教文化の比較研究
本研究は、「近代思想・欧米思想の研究との密接な連関の上に立脚しながら、東洋思想の特質を深く研究し、その特質を発揚することによって広く現代の世界文化への積極的貢献をなす」という研究所設立の理念を受け継ぎ、東西宗教の諸文化をグローバルな視点に立って研究するため、平成6年度より進められてきた。研究所をめぐる動向、研究所研究のあり方が見直されるにおよび、今年度をもって終了することとなった。最終年度の活動については、別表に掲げる研究分担・研究課題のもと、以下の調査および研究発表がなされたほか、今号に収載された論文「「神の国」におけるラフカディオ・ハーン」(豊田政子)、「〈研究ノート〉‥『玉歴鈔傳』について(1)―『玉歴鈔傳』紹介―」(川崎ミチコ)、「『宗鏡録』巻28所引「雑華厳経一乗修行者秘密義記」について―房山石経刻経『健拏標訶一乗修行者秘密義記』との対照研究―」(佐藤厚)、「初期不二一元論学派の字宙論について」(佐竹正行)、「四元素と世界の構成―『プラシャスタパーダ・バーシュヤ』における四元素説の解明―」(三浦宏文)、「翻訳 クリスチャン・ブイ著『ナータ派ヨーガ行者と諸ウパニシャッド』―(抄訳2)―」(橋本泰元)、「『念佛三味寶王論』に見る禪の動向」(伊吹敦)、「チベット語訳『能断金剛般若経』校訂テクスト(I)」(渡辺章悟)、「論理と生命―西田哲学と西谷哲学の場合―」(甲田烈)、「人工妊娠中絶と水子―アメリカと日本における中絶の状況と水子供養における胎児の位置―」(大鹿勝之)、'Zum Begriff der Natur in der chinesischen Philosophie'(ヴェルナー・ガブリエル)、'The History of the Idea and the Concept "Identity"'(中里巧)に本研究プロジェクトの成果の一端を見ることができる。
研究調査活動
研究課題「ラフカディオ・ハーン(小泉八雲)の宗教観」に基づく研究調査
豊田 政子 研究員
期間 平成15年8月18日〜8月19日
調査地 出雲・松江(出雲大社、松江市総合文化センター内図書館ほか)
ラフカディオ・ハーンの宗教観を探る上で、ハーンが来日してから 4か月後に教師として赴任した地、松江と出雲は大きな意味をもっている。
そのため今回の研究調査では早朝の便で出発して、まずハーンが外国人として初めて昇殿参拝を許され、神道についての関心を深めた出雲大社を訪れ拝観した。その後松江に向かい、松江市総合文化センター内の八雲会事務局長の白築和夫氏を訪ね、センター内図書館に所属する八雲会資料室で貴重なハーン関係の図書を閲覧し、資料を収集する。翌日は松江市内の小泉八雲記念館をはじめ小泉八雲旧居、月照寺、普門院、城山稲荷神社など、時間の許す限リハーンの作品に関わるゆかりの地をまわり、夕刻の便で帰京した。
松江と出雲を十数年ぶりに再訪し、白築氏や若いハーン研究者横山純子氏とも意見交換なども出来、滞在は2日間であったが大いに収穫の得られた調査出張であった。
研究課題「大地母神信仰の比較思想的研究」に基づく調査
中里 巧 研究員
期間 平成16年1月26日〜1月28日
調査地 沖縄本島南部、久高島
玉陵・久高島カベール・星砂の浜・伊敷浜・九高殿・外間殿・斎場御嶽・海軍壕公園内旧墓郡を調べた。
玉陵の構造が当時の風水術によって設計されていること・洗骨習俗の詳細・尚王期の第1と第2についての特徴・円・球に関する意味など、今回はガイドからかなりこまかく知ることができた。久高島では、天候が悪く、この時期にしては珍しく1日中雨が降り、おもうようには調査がはかどらなかったが、カベール域に拝所をみつけた。カー(井戸)のようにおもわれるが、久高島で知られているカーではないため、拝所とおもわれる。中ノ嶽はみつけることができなかった。斎場御嶽も昨年と状況は変わらなかったが、寄満が豊饒神信仰であることが確認された。