日本宗教文化の総合的研究
日本宗教文化の総合的研究
研究調査活動
大阪府立図書館においての資料調査
研究課題 「近世中・後期文学に見る雅俗」
(期間 平成11年5月26日〜27日)
中山 尚夫 研究所員
右記課題の調査として、大阪府立図書館所蔵の狂歌本の調査を27日午前中に行い、大阪青山短大の歴史文学博物館完成に伴う同短大所蔵名品展を同博物館で27日午後に見学した。ことにこの研究課題の資料となりうる近世の和歌や公家・武家の書状などは大いに参考となった。
府立図書館所蔵の狂歌本は、近世中期の上方狂歌のものも多く、狂歌史の中でも重要な地位を占めるものである。青山短大の名品はいずれも稀親本であり、よい機会に恵まれたと思う。
高野山大学内密教文化研究所寄託の山内寺院聖教目録の調査
研究課題 「草木成仏について」
(期間 平成11年5月三十30日〜6月1日)
伊藤 宏見 研究所員
草木成仏についての関東中世の真言宗の論師印融の著作写本類をたずねて、かねてからの調査の継続であるが、今回は、「両部曼陀羅私抄」上下2冊の写本の伝来についてくわしくしらべ、その他の資料について、その所在につき、つきとめることとなった。
私抄2冊は、天文廿2年写本で、比較的印融在世の時代に近く、奥書には「延徳三希辛亥仲冬候為レ令払弟子之迷霧、朗自心之覚ロレ抄之了金剛仏子(印融)」の識語のあることを知った。この本が印融の住房無量光院三世清胤の本であったものが、遍照光院の常住本とあり、祥道が釈迦文院の僧で長く別に保持していたものとわかった。その他貴重な写本等について、直接に手にすることを得て2日間の日程をおえた。
京都・大原および嵯峨野、大阪・住吉大社および中之島図書館における調査
研究課題 「平安朝文学の習俗ならびに表現の研究」
(期間 平成11年8月17日〜20日)
神作 光一 研究所員
京都では大原、嵯峨野を中心に実地踏査を行い、文献資料の収集・調査を行った。「伊勢物語」「源氏物語」「小倉百人一首」の関係で、研究上、大変有益であった。
また、大阪の住吉大社では、「住の江」と「住吉」の表限の違いを考え、「源氏物語」における住吉信仰の大きさを考えつつ調査を続け、文献を集めた。なお、中之島図書館での調査も、研究を推進する上できわめて効果的であった。
奈良(吉野・斑鳩・奈良市)における調査
研究課題 「平安朝文学の習俗ならびに表現の研究」
(期間 平成11年8月25日〜28日)
神作 光一 研究所員
吉野の蔵王堂、吉水神社、勝手院、竹林院、水分神社、宮滝と歩いた。日本の歴史や平安朝文学と関わりの深い吉野の実地踏査であった。
西の京の薬師寺、唐招提寺で、日本文学との関わりを確認した。その上で斑鳩の法隆寺周辺を丹念に歩いた。法隆寺周辺の竜田、あしたの原などの歌枕も実地踏査した。
また奈良市の奈良公園、高円山、春日野、飛火野、車大寺周辺の研究調査も実施でき、研究課題の進展上収穫が大きかった。
京都・園部における調査
研究課題 「室町前期における飛鳥井家の動向と文芸活動の研究」
(期間 平成11年8月17日〜19日)
千艘 秋男 研究所員
本研究は、中世歌壇・連歌壇で活躍した飛鳥井家の動向と文芸活動の実際とを考察するための基礎資料の整備を目指すものである。
今回は、飛鳥井雅縁・雅世父子の動向と文芸活動に関する文献資料調査と資料収集のために、京都の京都府立総合資料館、園部町中央公民館、生身天満宮、聖護院門跡文庫、古書肆等を訪問した。飛鳥井雅縁・雅世父子のうち、特に雅世の「家集」の伝本調査と懐紙・短冊類の資料収集に努めた。「小出文庫本」は「飛鳥井雅世集」の諸本中、第3類本に属し、「御所本」との関係が深い写本である。これは既に述べたが、疑問点解明のための精査を行った。この結果は、将来単行本の「諸本研究」の項に収める予定である。
自筆資料としては、「三首懐紙(在明月・初紅葉・名所浦」)、「短冊(山家嵐)・(春祝)・(樗)」等を調査した。併せて、飛鳥井雅親・雅康・雅春等の懐紙、短冊等をも調査・収集した。
これらは、南北朝・室町期に活躍した飛鳥井家の人々とその文芸活動を総合的に研究するための基礎資料である。
大阪・京都における調査
研究課題 「室町前期における飛鳥井家の動向と文芸活動の研究」
(期間 平成11年9月6日〜8日)
千艘 秋男 研究所員
今回も、飛鳥井雅縁・雅世父子のうち、特に雅世の「家集」の伝本調査と懐紙・短冊類の資料収集に努めた。そのために、大阪天満宮文庫、京都大学附属図書館、北野天満宮文庫、聖護院門跡文庫、古書肆等を訪問した。
「聖護院本」は「飛鳥井雅世集」の諸本中、第3類本に属し、「桂宮本」との関係が深い写本である。これも既に述べたが、精査して疑問点の解明に努めた。この結果も、将来単行本の「諸本研究」の項に収める予定である。
自筆資料としては、「三首懐紙(暁帰鳩・遠尋花・寄松雑)」、「一首懐紙(松契多年」)、「短冊(祝)」等を調査した。併せて、飛鳥井雅親・雅康・雅俊・雅春等の懐紙、短冊等をも調査・収集した。特に「祝」の短冊には「雅清」の署名があり、雅世の若年時の詠歌資料の1つとして貴重である。
これらも、中世に和歌・蹴鞠両道の家門として著名な飛鳥井家の人々と、その文芸活動を総合的に研究するための基礎資料である。
京都周辺(西行遺跡、東山、嵯峨、鳥羽)における調査
(西行法師の文学遺跡と仏教遺跡の調査)
研究課題 「日本中世仏教文学の研究」
(期間 平成11年9月3日〜5日)
高城 功夫 研究所員
9月3日は西行出家の動機にもなったとされる東山の寺々を探訪した。特に天台宗の寺双林寺の西行庵や西行を慕った頓阿の庵などを見学し、さらにかつては天台宗であった長楽寺という時宗の寺の周辺を調査し、霊山寺などを見学し、西行に与えた思想的なことなどを研究することができた。9月4日は嵯峨方面の西行の遺跡について探索した。西行の清水といわれる清水や二尊院の西行法師庵跡とするところなどを見学、西行の間書集の高尾(雄)の神護寺などを調査、西行の歌で有名になった清滝川の地理的位置などの調査をした。
9月5日は、かつて西行の仕えた鳥羽天皇の離宮、鳥羽離宮を調査。西行の在俗時代の離宮の様子をしのび、現実にある西行寺石碑を見、秋の山などの名所と城南宮の在りし日の環境などを考えてみた。かけ足であったが、よい調査研究ができた。
奈良国立博物館の調査および踏査
研究課題 「万葉集研究」
(期間 平成11年11月2日〜4日)
大久保 廣行 研究所員
11月2日 東京→奈良着
11月3日 奈良国立博物館調査及び正倉院展の見学
11月4日 滝坂の道〜柳生街道の踏査
奈良国立博物館では、文献調査のほかに、鳥毛立女屏風や聖武天皇の御床一式および駿河国正税帳や戸籍類に触れることができ、奈良時代の文学の背景をなす重要な文物を直接目の当たりにすることができて、大変有益であった。
また、春日奥山の原始林を抜けて奈良から柳生へ通ずる道は近世のものではあるが、万葉に関係の深い春日山の地形や能登川の流れを確かめうる点では便利であった。周辺に散在する古い石仏群も庶民の信仰を考察する上で参考になる。
熊野三山の信仰の実態調査
・気候風土からの信仰の実態調査。ことに熊野三山と仏教との習合について、家津御子神と速玉神、夫須美神の垂述の現実と歴史を探索する。
(期間 平成12年1月9日〜1月11日)
伊藤 宏見 研究所員
1月9日予定通り出発し、那智駅より補陀落渡海といった入水がおこなわれた、補陀落山寺へゆく。ここは平安時代から、海洋が浄土であるという思想により渡海入水の本拠地。その実際について考える。現地の伝承では、渡海入水の風習は次第に悪弊として停止されるにいたったこと。無理やりに僧らを船にとじこめて、入水、溺死させることとなり往生をやめる嘆願書が出されたといわれ、あまり評判のよくないことを知った。
1月10日、那智山へ上る。那智大滝、飛瀧社と、仏教遺跡の那智山経塚の碑と、その埋蔵の跡を見る。自鳳仏から平安の三摩耶形など。院の宿上皇の宿所などの坊をみめぐり、那智大社にのぼり、宝物資料館を見る。奈良時代の白銅水瓶があり、この時代すでに、戒律をもった正統的な仏教がこの地に入っていたことを知る。青岸渡寺の伽藍を見て、阿須賀の社の本地佛大威徳明王と3つの御正体のあることを知り、習合がおこなわれていたことを知る。速玉社に行き、平安の神像2体と、これらの仏教彫刻とのかかわりを知る。経筒などの出土品もあり、やはり神仏の習合のさまを知る。また奠供山という名の山があり、これも名前からして習合の跡とみる。
1月11日、朝、熊野川をさかのぼり、熊野本宮へ。明治までは本社は、川洲の社にあったことを知った。今回現地で入手した主な資料としては、①『熊野三山信仰事典』加藤隆久編、②『神秘の国熊野』神坂次郎監修、③『古道と王子社熊野中辺路』など多数である。