東洋思想における心身観
東洋思想における心身観
研究調査活動
「北欧と日本における死生観と思想的風土の比較研究」にともなう調査
中里 巧 研究所員
期間 平成12年8月3日~9月11日
調査地 ノルウェー、オスロ(スターヴ教会遺跡)、デンマーク、コペンハーゲン(スターヴ教会遺跡)
ノルウェーとデンマークにおけるスターヴ教会遺跡、遺構およびその先駆的形態であるドルメンを調べるとともに、多数のノルウェー・デンマーク関係者に聴き取り調査を行った。ノルウェーにおける調査内容は、Laerdal、Øye、Høre、Reinli、Hegge、Hedalenの各スターヴ教会の遺跡、遺構であり、それぞれの関係者から聴取した。また、Oslo Historisk Museam で、遺物の確認調査をおこなった。ノルウェーにおける調査は、8月4日〜22日であった。これはかなり圧縮した日程であり、現地の日程スケジュールと日本におけるスケジュールとの調整の関係でこうならざるをえなかった。Laerdalでは、一昨年調査した内容の追試的作業であったが、ほぼ予想通りの結果であった。Øyeでは、初期スターヴ教会の形態を思わせるデータが得られた。また、当初建てられていた場所を確定することができた。 Høreでは、ケルト紋様およびとりわけスターヴ頭上部のマスクを調査することができた。大きな収穫である。マスクのうち2つが動物であり、これは、オーディンとトールのマスクであると推定されうる。Høreの調査は天候や日程の関係で、終了できないままであり、さらなる継続作業が必要である。Reinli では、村の年祭とぶつかるなど、予定が多少ずれてしまった。Reinli では、関係者からさまざまな発掘品、遺物を堤示していただいた。Heggeでは、北欧唯一のオーディンマスクがあり、極めて重大な情報をえた。これは今後スターヴ教会、初期キリスト教史を塗りかえうるものである。Heggeの調査は3日間にわたった。Hedalenでは、Healing伝承を聴取した。このHealing伝承によって、スターヴ教会の思想的基層が大地母神信仰であることが、さらに検証された。Historisk Museum でHedalenのマリア像を詳細に記録した。またオスロ大学のGan教授と集中して議論した。デンマークでは、スターヴ教会の発掘作業がおこなわれているユランまで行き、自然有機体論との関係を調べた。また、Roskilde地域のdysserを調査した。これはスターヴ教会の先駆的形態であり、異教寺院の形態を推定するための重要な手がかりとなる。 Gamle Holtegaard では、関係者の考古学エキスパートと、7000年前に埋葬されたインド=ヨーロッパ族について、議論して、私のこれまでの見解が裏づけられた形となった。
今回の調査は、予算も自己負担額が多く悪天候で苦しいものであったが、事態をはるかに上回る成果が得られた。いづれ資料整理後、公に発表するが、国際的な協力関係がさらに必要となろう。
「インド大乗仏教に見られる心身観の研究」に基づく、インドの宗教儀礼及び西インドの仏塔の視察
渡辺 章悟 研究所員
期間 平成12年9月7日~9月17日
調査地 デリー、マトゥラー(マトゥラーのヒンドウー寺院)、オーランガバード、ナーシク(アジャンタ・ナーシクの石窟寺院)、ム
ンバイ
9月7日12時発のデリー直航便で成田を発し、その日の夜にデリー到着。9月8日から10日までデリーから200km程離れヒンドゥーの聖地マトゥラーとヴィシュヌ派の寺が並ぶヴリンダーヴァンを訪問。ヒンドゥーの宗教儀礼を調査。また当地はかつての仏教隆盛の地であり、多くの仏教遺跡が残る。先行研究論文を手がかりに2つの遺跡を訪ね、7世紀の中国僧玄英の記述と比較し、寺の構成を調べた。
9月11日から15日迄、オーランガバードを基点に西インドの代表的石窟寺院アジャンタ、ナーシク、オーランガバードの各遺跡を訪ね、全体の構成、石窟のスケッチ、祀堂、僧院、仏塔の構造を調査した。ただ、今回は調査の第1段階であり、これらの詳細な検討は次回の調査に回さざるを得なかつた。
いずれにせよ、古いもので紀元前2世紀頃からの石窟寺院の構成や、その中に彫られた仏像、壁画、碑文などを調査することによって、未だ知られていない大乗仏教教団の興起を具体的に解明することができると考えている。この調査を今後も継続して行うことによって実りある成果を実現したい。
分担課題「中世仏教文学における心身観」に基づく調査
高城 功夫 研究所員
期間 平成12年8月1日~8月5日
調査地 平泉・象潟・羽黒・立石寺
8月1日は、岩手県平泉の藤原3代の栄花の遺跡と西行の文学遺蹟である東稲山周辺の調査、あるいは仏教関係の遺蹟の調査をし、芭蕉の奥の細道や源義経関係の遺蹟などを調査見学した。8月2日は象潟を中心とした能因法師の伝承、西行の伝承そして奥の細道の芭蕉の事跡の調査を行い、西行桜と蚶満珠寺の研究をするための資料収集を行った。8月3日は羽黒山を中心とした修験道の研究調査として、羽黒・湯殿・月山の修験道遺蹟の調査をした。特に湯殿山を中心とした調査研究をし、信仰と修行ということについて考える際の材料や資料を収集した。またこの出羽三山は芭蕉にとっても修行の地であったので奥の細道の遺蹟調査も行った。したがって翌日8月4日も羽黒山周辺の調査にあてた。8月5日は山寺に行き、天台宗の古刹立石寺を訪れた。ここはやはり修験道の道場であるので、出羽三山の道場との比較などを行い修行という心身の道場の調査をし、信仰ということを考えるための手段とした。また奥の細道の心身観ということでの調査見学もして、帰京した。
分担課題「万葉文学に見られる心身観」に基づく研究調査
・福岡県下の筑紫万葉に関する調査(資料収集と実地踏査)
大久保 廣行 研究所員
期間 平成12年8月25日~8月27日
調査地 福岡・太宰府等
8月25日 太宰府政庁跡および観世音寺を訪ね、太宰府資料館において資料を収集した。
8月26日 水城跡、国府跡、天満宮等を廻り、さらに九州歴史資料館を見学、資料を入手した。
8月27日 笛崎宮・香椎宮・志賀島など博多湾周辺を細かく調査した。
このほかにも万葉歌の詠まれた現地を可能な限り訪ね歩いてその背景を知ると共に、貴重な資料を収集できたことはまことに有益であった。