東洋学研究所を研究拠点とした科学研究費助成事業による研究
東洋学研究所を研究拠点とした科学研究費助成事業による研究
本研究は、日本学術振興会の科学研究費助成事業・科学研究費補助金(基盤研究A)による共同研究(JSPS 科研費JP17H00904)であり、二〇一七年四月より、東洋大学東洋学研究所内に「国際禅研究プロジェクト」を立ち上げ、研究活動を行ってきている。
①研究目的
禅宗は、インドの仏教思想と中国の伝統思想が融合することで成立した全く新しい仏教であり、スティーブ= ジョブスに見るように、その思想や文化は今日もなお十分な活力と社会的意義を有している。本研究プロジェクトは、禅思想研究や禅宗史研究の分野で、これまで世界をリードしてきた日本の禅研究の伝統を受け継ぎ、若手研究者を糾合することによって、中国や韓国、欧米など、世界各地に分散する研究者との交流の場となるような国際的な研究拠点を作り、国内外の第一線の研究者との交流の中で、禅に関する最も重要な課題である次の二点を明らかにすることを目的とする。
Ⅰ. 禅のような独自の思想が中国においてどのように生まれ、変遷していったのか。
Ⅱ. 禅は日本においていかに受容・変容され、それが海外へと広まっていったのか。
②研究組織
研究代表者
伊吹 敦 研究員(東洋大学文学部教授)
役割分担 研究の総括/初期禅宗文献のテキスト研究/奈良・平安時代における禅受容過程の解明/日本禅の海外への展開と傳播過程の解明
研究分担者
何 燕生 郡山女子大学短期大学部教授
役割分担 鎌倉時代における禅の受容過程の解明
齋藤智寛 東北大学文学研究科准教授
役割分担 唐から宋に至る禪思想史の解明
柳 幹康 東京大学東洋文化研究所准教授
役割分担 唐から宋に至る禪思想史の解明
土屋太祐 新潟大学人文社会科学系准教授
役割分担 禅問答・公案の研究
村松哲文 駒澤大学仏教学部教授
役割分担 禅文化の研究
程 正 駒澤大学仏教学部教授
役割分担 初期禅宗文献のテキスト研究
舘 隆志 客員研究員(駒澤大学仏教学部講師)
役割分担 鎌倉時代における禅の受容過程の解明
原田香織 研究員(東洋大学文学部教授)
役割分担 禅文化の研究
ダヴァン・ディディエ 国文学研究資料館研究部准教授
役割分担 禅問答・公案の研究
③研究の経緯
二〇一七年度より二〇二〇年度にかけて、数多くの研究会、講演会、シンポジウムを開催し、その成果を『国際禅研究』を刊行して発表している。また、収載された論文や発表は、東洋大学学術リポジトリにPDFが公開されている。
④二〇二一年度の研究活動
全体の統括を行う研究代表者の下に、「中国における禅の形成過程の解明」を目的とする第Ⅰ部会と、「日本における禅思想の受容過程の解明」を目的とする第Ⅱ部会を設置し、以下のような人員配置を行った。
研究代表者 伊吹敦(東洋大学教授)
第Ⅰ部会
1.初期禅宗文献のテキスト研究
伊吹 敦
程 正
2.唐から宋に至る禅思想史の解明
伊吹 敦
齋藤智寛
柳 幹康
3.禅問答・公案の研究
土屋太祐
ダヴァン・ディディエ
第Ⅱ部会
1.奈良・平安時代における禅受容過程の解明
伊吹 敦
2.鎌倉時代における禅の受容過程の解明
舘 隆志
何 燕生
3.禅文化の研究
原田香織
村松哲文
4.日本禅の海外への展開伝播過程の解明
伊吹 敦
研究支援者 金子奈央 客員研究員(中村元東方研究所専任研究員)
水谷香奈 客員研究員
本研究のプロジェクト会議は二〇二一年五月二十九日および十一月二十七日にWebex を利用したオンライン会議で行われ、定例研究会を以下の通り開催した。
第Ⅰ部会
第1回 研究発表会
日 時:二〇二一年五月二十九日
会 場:オンライン開催(Webex 利用)
発表者および題目
伊吹 敦
「李舟撰『能大師傳』の內容とその歴史的意義」
第2回 研究発表会
日 時:二〇二二年二月十二日
会 場:オンライン開催(Webex 利用)
発表者および題目
何 燕生
「『禅と武士道』という言説の生成とその背景─新渡戸稲造・井上哲次郎から鈴木大拙まで」
第Ⅱ部会
第1回 研究発表会
日 時:二〇二一年十二月十八日
会 場:オンライン開催(Webex 利用)
発表者および題目
伊吹 敦
「『內證佛法相承血脈譜』の編輯過程について─初期禪宗文獻が最澄に與えた影響─」
また、以下の通り公開講演会、シンポジウムを開催した。
公開講演会
「三者鼎談:『正法眼蔵』の表現・翻訳・思想をめぐって」
日 時:二〇二一年九月十八日
会 場:オンライン開催(Webex 利用)
司 会:ディディエ・ダヴァン(国文学研究資料館)
鼎談参加者:
ジャン= ノエル・ロベール(コレジュ・ド・フランス)
角田泰隆(駒澤大学)
何燕生(武漢大学/郡山女子大学)
「近世曹洞禅宗における伝説の秘伝化
─片岡山飢人説話」を中心に─」
日 時:二〇二一年十二月十八日(土)
会 場:オンライン開催(Webex 利用)
マルタ・サンヴィド(カリフォルニア大学バークレー校)
「唐代禪林茶飲里宗趣的變化」
日 時:二〇二二年二月十二日
会 場:オンライン開催(Webex 利用)
蒋海怒(浙江理工大学)
国際シンポジウム
「禅文化の諸相とその特質」
日 時:二〇二一年十月九日
会 場:オンライン開催(Webex 利用)
フランソワ・ラショウ(フランス国立極東学院)
「禅画における猛獣像に関する一考察─仙崖を中心に」
西山美香(花園大学)
「日本禅の成立──夢窓疎石の文化利用」
原田香織(東洋大学)
「世阿弥の禅的趣向に関する考察」
村松哲文(駒澤大学)
「隠元禅師来日以降の禅美術の展開」
伊吹敦(東洋大学)
「 禅芸術とは何か──久松真一の「禅芸術」論とそれへの反響を糸口にして」
全体にわたる質疑
「近代化は仏教をどう変えたのか」(研究所プロジェクトと共催)
(国際禅研究プロジェクト・東洋学研究所プロジェクト共催)
日 時:二〇二一年十月三十日・十月三十一日
会 場:オンライン開催(Webex 利用)
( 発表題目および発表者については、「二・三 外国人研究者との連携による東アジア仏教の歴史と思想の解明」のシンポジウムのページを参照)
「中国・韓国・日本 看話禅の諸相」
日 時:二〇二一年十一月二十七日
会 場:オンライン開催(Webex 利用)
コーディネーター・司会:土屋太祐(新潟大学)
ダヴァン・ディディエ(国文学研究資料館)
「日本的看話禅の誕生──大燈派と公案を中心に」
柳幹康(東京大学東洋文化研究所)
「白隠の実践体系とその背景」
金龍泰(東国大学校)
「朝鮮時代禅僧達の看話禅理解と臨済宗正統主義」
朴仁錫(東国大学校)
「韓国近現代禅仏教の復興と発展
──鏡虚惺牛と退翁性徹を中心として」
野口善敬(花園大学)
「中國の看話禪における話頭の推移」
張超(フランス 高等研究実習院)
「宋代看話禪形成史綜述 」
全体にわたる質疑
そして、研究成果の刊行物として、『国際禅研究』第七号、第八号、第九号を刊行した。以上の研究発表会、公開講演会、シンポジウムでの発表・講演の内容が収載され、また研究成果の論文が掲載されている。以上の研究活動の詳細については、当該の号を参照されたい。