2023年度 公開講演会 発表報告
開催日:2023年11月25日 場所:白山キャンパス・オンライン
2023年度 公開講演会 発表報告
開催日:2023年11月25日 場所:白山キャンパス・オンライン
本年度の研究所主催の公開講演会は、講演会の開催に先立って原田香織研究所所長が挨拶したのち、今回の講演会を企画した高橋典史研究員の司会でプログラムを進行した。吉水岳彦氏、白波瀬達也氏の講演後、聴衆とのあいだで活発な質疑応答が行われた。
〔講演要旨〕
講演では、まず「縁起」(空間的にも時間的にも、すべての存在は無関係ではありえない)、「支縁」(支え合うご縁を大切に共に生きる)、「念佛」(佛・如来様を念い、念われ、如来様と共に生きる)という、吉水氏の活動の背景にある三つの共生をめぐる思想について取り上げられた。そして、現代の「共生」の思想や取り組みにも深く関わる、椎尾弁匡の「共生」(ともいき)や渡辺海旭の「共済思想」についても詳しく紹介があった。そうした自身の信仰や思想についての説明があったうえで、これまで吉水氏たちが取り組んできた、生活困窮者、自然災害の被災者、在日外国人、地域の子どもやその親たちなどに向けた多岐にわたる活動が詳しく紹介された。信仰をもつ仏教者たちによる「ひとさじの会」では、社会活動に取り組むうえで、他者と悲喜を分かち合い、他者のために尽くさせていただくことを大切にしているという。豊かになったはずの現代日本において、実際にホームレス状態にある人びとだけでなく、居場所、拠り所のない状況にある人びと(たましいの孤独を感じている人びと)は多い。本講演では、真の共生社会の実現に向けて、人びとが互いに支え合うものとしての「支縁」の意義が説かれた。
講演者:白波瀬達也氏(関西学院大学教授)
〔講演要旨〕
白波瀬氏は、吉水岳彦氏の講演も踏まえて、自身が専門とする社会学・社会福祉学の視点から、吉水氏たちのこれまでの活動とその意義について詳しく解説した。急激に変化している現代日本社会において、仏教寺院は岐路に立っている。そうした状況のなかで、社会制度が整備されていない領域(社会的包摂の仕組みが未発達な領域)に関しては、仏教寺院が果たしうる役割があるという。とくに僧侶や檀家といった、従来からある仏教寺院の「内側」の人びとだけでなく、地域社会の多様な住民・市民、すなわち「外側」の人びとと協力した社会活動(死者の弔いなどの宗教だからこそ担える活動が、そこには含まれる)の可能性が指摘された。
(記録 高橋典史)