僕の住んでいるフサガスガは北緯4度20分にあって、ほぼ赤道直下の町です。朝、夜が明けるのは6時ちょっと前です。日本なら冬の夜明けは遅く、夏は早いのですが、ここでは1年中ほぼ同じ時刻です。コロンビアの家は、2階建てなら殆んど全ての家は、1階は応接間で2階が寝室になっています。我が家もそうで、2階の寝室で、朝の6時前に戸外から聞こえてくる様々な鳥の鳴き声で眼を覚まします。チュンチュン、ホッホッホー、ヒョーヒョー、キーチュルルン、チッチ、ヒュルルーン、ヒューピイーと、何種類もの鳥が夜明けと共に合唱を始めるのです。この国には、もう6年少し暮らしていますが、一日の天気は変わり易く、先程まで晴れていたと思えば、もう雨です。しかし雨は短く20~30分したら上がります。ここは南米アンデス山脈の1,600mの高さにあって、1年中初夏の気候です。日本と違って、服もT―シャツだけで良いんです。ここからクルマで30分ほど西に走ると、アンデスの谷間に降りて熱帯の暑さだし、さらに2時間ほど走ると4,000mの寒いくらいの山に登ります。日本と異なり、1日で真夏と冬が経験できるのです。
フサガスガでは生まれて初めて自分の家を持ちました。今までは日本でもずっと借家だったので、毎月家賃を払っておけば良かったのですが、自分の家となると全部自分で解決しなければなりません。日本では団地に20年ほど住んでいたことがありますが、家に問題が起こったことは全くありませんでした。しかしこの国の家の建設工事には問題が多くて、大変です。我が家は、まだ築3年の家でしたが、いろいろ問題がありました。
まず雨が降ると家の中に水が入ってきて床が水浸しになりました。日本は座敷が地面より高くなっていますが、こちらは同じ高さです。従って1階の玄関や2階のベランダに降った雨が、ドアの下から家の中に入って来たのです。ドアの外側にセメントを張って雨水の浸入を防ぎました。1階の玄関の横には6畳くらいの屋根があって、その横に使用人が住む小さな部屋が作られていました。僕にはそんな部屋は要らないので、そこに風呂を作りました。ところが入口の6畳くらいの屋根を見ると、壁と屋根の間が少し開いていて、雨が降ると雨水が入ってきます。入浴時にしか使わないし、そこは一応家の外でサンダルを履いて入るので問題はなかったのですが、雨水の浸入を防ぐために壁を屋根瓦まで伸ばしました。これで雨水の浸入問題は片付いたのですが、そこに新しく風呂を作ったので配管工事が必要でした。1年ほど経った先日、配管に問題が出てきてまた工事をしました。また一年ほど前に炊事場の水道栓のパッキンを変えましたが、それが1年も持たずにまた交換が必要です。風呂の配管工事も、またすぐに問題が出なければ良いのですが・・・
この国は日本のように大雨が降ることは少ないのですが、それでも時々半日ほど降り続くことがあります。その時に分かったのですが、庭の芝生が雨水で水溜りになりました。滅多にないのでほって置いても良いのですが、芝生の下に配水管を作って家の外に水を抜く工事してもらいました。配水管は駐車場の端を通しました。その駐車場には雨水避けの屋根がなかったので、ガラスの屋根を着けてもらいました。これとは別に、庭に日本庭園を作ろうと考えていましたが、邪魔くさい気がしてきたので一応止めることにしました。 去年の10月11日にボゴタのSuzukiに修理に出していたSavage650は、6ヶ月経ってから店の責任者が女の人に代わって、その1ヵ月後、部品をはずしてバラバラになった状態で修理できないと言われた。修理に出してから合計12回、家からバスで3時間も掛かる店に通った後のことである。腹が立ったが、気を取り直し女責任者に頼み込んで、今年の5月14日修理を済ませてもらった。修理代も高く5万円ほど払った。ところが5kmほど走った所でバイクのエンジンが止まった。電話して店の整備士に来てもらった。エンジンが掛かったので今度こそ大丈夫だと思って走り出したが、エンジンの調子が最悪で、5キロほど走ったらまた止まった。今度はエンジンは架からない。まだボゴタ市内を出ておらず近くにバイク屋があったので、また修理に出した。1週間修理してもらったがボゴタまで行くのが大変なので、一応引き取ってフサガスガの家に帰った。修理代は15,000円ほどした。翌日地元のバイク屋に行き、電気配線を交換してもらった。7,000円ほど支払った。6月1日だった。その日は遅くなったので家まで乗って帰り、翌日試運転するつもりだった。家に帰りバイクを見ると、ブレーキ・オイルの量が足りないのでキャップを外そうとしたらネジ山が潰れてしまった。バイク屋で外してもらうことにして、この日の作業は中止した。6月2日、バイク屋に行こうとしたら、途中でバイクがエンストした。バイク屋に電話してバイクを取りに着てもらった。バイク屋の主人から、ボゴタのSuzukiの修理は滅茶苦茶で、エンジンオイルのシリンダー・ヘッドへの供給路が全て塞がれていると言われた。そのせいで、ボゴタからの約60kmの運転でバルブ・ロッカー等が磨耗したので、田舎のフサガスガでは修理できず、またボゴタの修理屋にエンジンの一部を提げて修理に行く破目になった。この修理でまた7,000円ほど架かった。
去年の10月11日にボゴタのSuzukiに修理に出す前から、カムシャフト・ドライブ・チェーンを2回交換したが、100kmほどしか走っていないのにチェーンが伸びていることに偶々気がついていた。良く見てみるとデコンプ・ソレノイドへの配線が切断されているではないか。それとデコンプ・コントロール・ユニットの配線も6本のうち一本が切れている。それを修繕してもらおうとしたら、フサガスガのバイク屋は回っていたエンジンが回らなくなったと言って、またエンジンを開けていた。二日前の7月30日にまたバイク屋に行ったら、エンジンは閉められていたがやはりエンジンは回らなかった。このバイク、直るんだろうか?
今から2年と少し前、多分2007年の6月だと思いますが、動脈硬化症になりました。それからは記憶力が本当に悪くなりました。余り得意では無かったエスペラント語、スペイン語はもちろん、英語それに日本語まで以前のようには使えません。このままでは良くないと思って、1年ほど前から全て日本語ですが、禅関係の本を20数冊、世界史こぼれ話6冊、スペイン語の簡単な教科書2冊を読みました。今は中公文庫「世界の歴史―全16巻」の第1巻目と「基礎スペイン語文法」を読んでいます。読む方はまだ少し読めない漢字がありますが、大体読めるようになりました。しかし書けないのです、漢字が。このため2年前から日記の書く文字数を増やしていますが、書けない文字が毎日増えていっているような気がします。まあ、パソコンを使っている分には問題がないのですが… 漢字を再び覚えるため、広辞苑を第一ページから見ています。いまアイウエオ順にア、イ、ウまで終えました。先の長さにゾッとしています。今まで見たことも無い漢字が沢山あります。動脈硬化になっていなくても覚えるのは大変です。どうせ覚えられないんだから勉強してもしなくても一緒だと思いますが、まあ、気休めでしょうか?
問題は動脈硬化でイカレた頭ばかりではありません。動脈硬化で足に血液が回り難くなりました。それでできるだけ毎日、戸外を一時間くらい歩いています。この辺りは田舎で、家のすぐ近くをパン・アメリカン・ハイウエーが走っています。パン・アメリカン・ハイウエーと言っても片道1車線の小さな道です。僕の家はそのハイウエーに沿って、1軒屋の家が24軒建つ予定の敷地に、まだ13軒しか建っていない新しい住宅地です。しかもその13軒の内、常時人が住んでいるのは7軒だけです。ハイウエーは坂道で、上方向に50kmほど登れば海抜2,500mのボゴタへ、下方向に下れば30分ほどで熱帯の低地に出ます。団地を出てハイウエーに沿って100mほど下ると、東に下る道がありますが、傾斜が急なのでそこへはバイクやバス以外で行ったことはありません。ハイウエーに平行して地道が一本だけ走っています。それ以外に道が無いので、いつもこの道を歩いています。少し変化に欠けますが、殆んどクルマが走っていないので案外快適です。
動脈硬化のため、2年ほど前から酒とタバコを止めました。そうすると太ってきました。それで1年ほど前から10分程度の体操を始めたのですが、体重はそのままです。ちょっと気になるので10日ほど前から腹筋運動を始めました。コロンビアに着いた頃に履いていたズボンのウエストは、今より10cmほど小さくて、我ながら良く太ったものだと感心しています。しかし、少し不細工なので腹筋運動を始めた訳です。
動脈硬化になってから一切夢を見なくなりました。それと年寄りに有りがちなことですが、睡眠時間が短くなりました。それまでは何時間でも眠れたのですが、病気になってからは大抵、朝5時頃に眼が覚めます。寝るのが夜の11時くらいだし、仕事もしていないので6時間ほど寝れば十分だということになるのかもしれませんが、時には3時頃眼が覚めることもあります。ただ5時に眼が覚めたとしても5時45分くらいからNHKのテレビを9時か10時頃まで見て、その間少し居眠りすることがありますから、睡眠時間は大体足りているように思います。夢は脳の記憶を整理する働きがある、と本で読んだことがありますが、僕の脳細胞の多くは死んでしまったのでその必要がないのかも知れません。
フサガスガに引越ししてからは、全く旅行していません。家の改装に時間を取られたせいもあるし、また頭の病気のせいかも知れません。それよりも大きな問題は、毎月の家の諸経費の支払いにあると思います。銀行口座からの自動振込制度は首都のボゴタにはあると聞きましたが、フサガスガの様な田舎町にはありません。そこで、指定された銀行に毎月1回行って電気代等を直接支払わなければなりません。それも請求書が来てから大抵1週間以内で、時には明日1日しかないと言うこともあります。前もって何か月分か支払えないか聞いてみましたが、それは無理だと答えます。この国で前もって何ヶ月も前に必要経費を支払うなんて、全く考えられないことで無理はありませんが・・・ まあ、今は毎日遊んでいるので問題がありませんが、少し長い旅行をした場合は問題です。来年は日本に一時帰国しようと思っているので、どうしたものかと考えています。支払いは、草刈り代等の家の管理費は同じ住宅地の人が集めているので前払いできますが、電気代、水道代、電話代及びインターネット代、テレビの受信料は銀行で支払わなければなりません。それも日本のように毎月月末ということではなく、月初め、中旬、月末とばらばらです。またこの国で長い間家を留守にすれば、泥棒に入られます。この住宅地に来て1年3ヶ月になりますが、もう3軒の家に泥棒が入りました。今のところマリアの弟が仕事をせずに遊んでいるので、来年日本に帰る時には留守中この家に来て住んでもらおうかと思っています。
日本にも、定年退職者の僕には年金が少なすぎて暮らせないという大きな問題があります。定年退職を考えるとこの国の方が暮らしやすいと思います。警察官で10万円くらいの年金があるそうです。僕が去年からもらっている年金の額は毎月10万円を少し切っています。この国で普通の暮らしをしていれば10万円で十分暮らしていけますが、物価の高い日本では20万円もらってもしんどいかも知れません。とにかく僕はこの国に骨を埋めるつもりです。
テレビを見ていると、8月になると言うのに今年の日本の梅雨はまだ続いていて、しかも大雨が降っているようですね。地球の温暖化で今年の夏は灼熱の暑さになると思っていたのですが、電気冷房器の販売が30%ほど落ちているらしいですね。でも、この大雨の梅雨が終わると記録的な暑い夏になるのではないかと少し心配しています。
8月1日で61才になった松本トオルより