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  1. (1)2001年7月23日 カルガリー付近からのメール

  2. (2)カナダに入る

(1)2001年7月23日 カルガリー付近からのメール

日本ではとうとう梅雨が明けたらしいですが、今度は熱波が襲っているらしいですね。僕の方は50日の旅になりましたが、天気に恵まれまだカッパは一度も着ていません。50日も雨にあっていないんです。30分で上がるにわか雨には2回出くわしましたが、それもうまく避難場所が出現して難を逃れました。

5000kmを走った時点で、そろそろエンジンオイルを交換しようとバイク屋へ行ったら、オイルフィルターが必要だけれどもBMWのものはないといいます。それからもう500~600km走って、今日とうとうカナダに入り、アメリカのバイク屋が教えてくれた町まで遠回りしてバイク屋を尋ね回ったら、BMWの店はなくなったと言います。これから200km先のカルガリーにはあるそうなので、明日行きます。カルガリーでは店中のフィルターを買い占めてやります。HONDAとか日本のバイク屋はなんぼでもあるんですが… この調子では中南米はどうなるの?

きょう中にカルガリーに行こうと走っていたら、途中の名はあるけど名もない小さな町で新香港飯店とかいう看板が、空腹のセイで目に飛び込んできました。入国して最初の町でカナダのお金を出しておいたので、久しぶりの正しい料理、アメリカより5割は安くてうまいんです。ついでにモーテルの値段の聞いてみたらそんなに高くない。それでこの町に一泊することにしました。でもこのモーテルには風呂とプールがある。プールはどうでもエエけど風呂はこの先いつになるか分からない。風呂に目がくらんで6000円も払ってしまいました。

モーテルに着いて、すぐシャワー。ついでに足もみ洗濯。R1100Rのウィンドシールド、バックミラーやらの汚れを拭いて、その上に洗濯物を干す。これがホテル到着後のいつものパターンです。その後は、もちろんビールの買出し。もう一缶いただきました。

カルガリーの後は、いよいよ日本のみなさん憧れのカナディアン・ローキーに参ります。

このところ、やっと時間に余裕ができてきたのでアメリカのモンタナからカナダのエスペランティストと接触を取り始めました。日本からコピーしてきた名簿には、どう言うわけかカナダの名簿が一切載っていないので、インターネットで見つけたカナダエスペラント協会の会長にメールを送り、この付近のエスペランティストの連絡先を手に入れました。カルガリーの二人に三日前にメールを送り、今日その返事を期待していたのですが、来ていません。これからもう一度メールを送ります。

この二日間、Glacier国立公園のキャンプ場でエスペラント8月号の記事を書きました。日本語と英語は書いたんですが、肝心のエスペラント語がまだです。辞書が要るんです。そのためにはコンピュータが要るんです。そのためには電気が要るんです。これからします。

きのう、キャンプ場に白昼堂々と、黒熊が出現いたしました。それも僕のテントの近く、70~80メータ先のブッシュの中をウロウロしておりました。そのためレインジャーが出動し、熊を追い払うため威嚇射撃をしたり、拳銃を持った警官がパトカーで駆けつけて、樹の上に吊るしていた僕の食料や洗面道具を他所へ持っていったり、久しぶりに少し刺激がありました。熊さまが住んでいらっしゃるキャンプ場はいろいろと面倒なんですよ。それでこれから行くカナディアン・ロッキーはユースホステルに泊まろうかな、と思っていますが、そこは今度は人間が油断ならないと聞きます。高価なパソコンを持っていますから、少し心配です。

キャンプの夜は寒くなってきました。寝袋二枚は、もっと南のほうでも使いましたので大正解です。

(2)カナダに入る

Glacier国立公園を出て、左手にロッキーの峻険な岩山を眺めながら一路カナダへ向かう。カナダまでは30kmほどなので、ほとんど全てがカナダに向かうクルマなんだろう。交通量もめっきり減った。前方に星条旗、その向こうにカナダの国旗を揚げた建物が見える。アメリカ側の建物は大きく、広い駐車場もあるのに無人状態だ。どこから敷地内に入れば良いのかと思っているうちに、アメリカの国境線のゲートの前まで来てしまった。ふと見ると、カナダ側からアメリカへ入ってくるクルマがある。目で追っていると、そこにゲートがあり確かに係員がいる。手続きをせずに出国するのは気持ちが悪い。そこで、そのクルマの後に付ける。「アメリカからカナダへ行きます」と言うと、係員がキョトンとしている。結局、黙って通過すれば良かったのだ。カナダ側でも入国手続きはいたって簡単で、荷物検査もなく、すぐに三ヶ月の滞在許可がもらえた。国境を越える時は、いつも少なからず緊張するものだ。今まで一番国境を感じたのは、カリフォルニアのサン・ディエゴからメキシコへ入ったときだ。一歩国境を越えると、人種、言葉、建物、道路それに街の匂いまで激変する。でもここの国境は何も変わらない。カナダに入っても?全く同じ状態の道路と風景が続く。

しばらく走ってからカナダに入ったことに気が付く。道路標識が、英語とフランス語で併記され、距離がマイルでなくキロメートルで表示されている。最初の町の銀行で、ATMからお金を出す。いよいよアメリカではない。ディスプレーが、まずフランス語か英語のどちらかを選択せよ、と言ってくる。アメリカではスペイン語との選択がしばしばあったが、フランス語は見ただけでパニックになる。

モンタナに入ってしばらくしてから走行距離を見ると、カリフォルニアを出て以来5000km以上走っていたので、エンジンオイルを替えてもらうためずっとBMWのバイク屋を捜しながら走ってきた。アメリカの国境付近のバイク屋が、Lethbridgeという町にBMWのオイルフィルターを置いてる店があるというので、まっすぐカルガリーに行かず、少し東に回り道する。ロッキー山脈は次第に遠ざかり、360度に広がる大農場地帯が続く。土地がきちんと管理されている。確かにここはアメリカでなくカナダだ。 Lethbridgeに着く。まず、なぜかアルコールの価格調査のため酒屋に入り、ウィスキーを買ったついでに、店主らしい綺麗なご婦人にバイク屋の所在を聞く。知ってるはずがない。酒はアメリカより高いですね、と話をそらす。お釣りをもらう。硬貨の模様は違うが、大きさと色はアメリカと全く同じだ。覚えやすい。ただアメリカと違い、1ドルと2ドルの硬貨がある。店を出ると、そこへ男の客が来たのでまた聞く。BMWかどうかわからないが、あると言う。二人とも丁寧に答えてくれる。カナダは初めてだが、これだけでカナダが気に入る。教えてもらった店はSUZUKIだった。 BMWの店は最近なくなり、カルガリーにはあると言う。ひょっとしてオイルフィルターくらいはおいているかもしれないと思って近くのHONDAの店にも行ってみる。ない。カナダに入ったというのに、この町は平地にあるためか暑くて汗が流れ落ちる。仕方なくカルガリーへ向かう。途中の小さな町で美味しい中華料理店があったので、その町で一泊しする。翌日モーテルを出ると、しばらくして雨だ。アメリカに着いて50日、初めてカッパを着る。大雨に加えて強風。風に煽られR1100Rは蛇行する。時速100キロで意思に反して蛇行するのは、決して気持ちのいいものではない。カルガリーは冬期オリンピックを開催しただけあって、大きな街だ。また人に聞く。電話帳を見る。分からない。自動車の修理店で聞くと、自動車のBMW店なら知っていると言う。

木の枝に食料を吊るす。

そこへ行く。店は閉っている。留守だがすぐ戻るらしい。店主が戻る。親切だ。電話までして確認してくれる。カナダがますます好きになる。レストランでもモーテルでもスーパーマーケットでも、どこでもアメリカより人が素朴で優しく感じる。 やっと捜し当てたバイク屋は、カナダで一番大きいというだけあって、あらゆるメーカーのバイクが店に並べられている。店員にはアジア系の人も数人見かける。うち一人は日本人で、三才まで東京にいたと言う。それにしては日本語が完璧だ。父親が寿司屋に勤めていると言う。なるほど、この街には寿司屋が多い。寿司屋はどうでもいいが、BMWの店はなぜこんなに少ないのか。オイルフィルターのために、もう700km以上も走ってきたではないか。この調子では、BMWの部品を入手するのに二週間はかかると言われる中米それから南米ではいったいどうなるのか。オイルフィルターを6個も注文する。受け取って後悔する。大きい、重い。 カルガリーは翌日も天気が悪く、その上涼しいと言うよりも寒かった。 きょうは朝から快晴だ。エンジンオイルも交換できた。意気揚揚とカナディアン・ロッキーのバンフへ向かう。

カナダで一番大きい、カルガリーのバイク屋

バンフの大きなホテル、Hot Spring Hotel。

バンフの山の上の温泉

遠くに小さく見えていた山々が次第に大きく迫ってくる。バンフの少し手前で、国立公園利用料として一日5ドルを取られる。アメリカでは日数に関係なくカナダドルに換算して7.5ドル~15ドルだった。アメリカが大雑把なのか、カナダが生真面目過ぎるのか。日本の観光客も多いバンフは、高い岩山に囲まれた谷にある小さな町だ。5分も歩けば町を出てしまう。ここのキャンプ場は、アメリカとほぼ同じで1600円(21ドル)だが電気があるのでパソコンが使える。それにシャワーは無料で時間制限はない。アメリカのキャンプ場では普通、シャワーは5分間で1ドル払う。からだ中シャンプーと石鹸のまま5分間のシャワーが止まり、困り果てた思い出があるので、これはありがたい。ここの便所はアメリカよりも、もっと綺麗だ。そしてアメリカでは例外なくトイレットペーパーに鍵がかかっていたが、ここでは盗もうと思えば思いのままだ。でもトイレットペーパーはきちんとそこにある。カナダの社会はアメリカほど乱れていないのかもしれない。 そうだ、カナダに入ってからガソリンスタンドの支払にクレジットカードが使えなくなり、日本と同様、現金払いになった。この国は、現金を持っていてもまだ安全なのか。大昔、アメリカで一万円の現金を持っていると、一つ間違えば命をも取られかねないとアメリカ人から忠告されたことがある。

入国してすぐ、思案の末現金4万円を銀行から出した。カナダでは案外問題がないのかもしれない。支払方法以外は、日本と違いセルフサービスである点、また1リッターが日本より安い60円程度である点でアメリカと同じだ。 ガソリンスタンドからクレジットカードは消えたが、モーテルでは問題なく使える。モーテルの値段も、一番安いところしか知らないが一泊5000円くらいであまり変わらない。モーテルで違うのは、カナダのモーテルには日本同様、部屋に冷蔵庫が置かれている。喉から手が出るほど冷たいビールが飲みたかった暑いアメリカのモーテルに冷蔵庫がなく、夜は寒いくらいのカナダのモーテルに冷蔵庫があるのは皮肉だ。 しかしながら、小さな点を除けばカナダはアメリカとよく似ている。言葉もこの辺りは英語だ。交通量が少なく整備の行き届いた道路があり、そこには色まで同じ交通標識が立てられている。大きさも色も同じ硬貨を使い、キャンプ地代、モーテル代、ガソリン代、それに食料品等の値段もあまり変わらない。カナダはアメリカの物価に合わせているのではないかとまで思える。ただ例外があって、それが今僕の大問題になっている。カナダに入ってから、毎晩飲む缶ビールと毎日吸うタバコの値段がほぼ倍になった。一日でも早くこの国を出なければならない。

バンフの村近くの Johnson Lake