Guatavita
コロンビア人はみんな、「この国は腐敗していて、お金さえ出せば何でもできる」と言います。それを信じて1年半前にBMWをこの国で不法に登録しようとしましたが、結局できずエクアドールまで行って不法に、だから捨て値で売るはめになりました。コロンビア人は調子が良くて、いい加減なことばかり言います。だから「お金さえ出せば何でもできる」も、信じないようにしてました。コロンビアに住んでいて問題は、温泉でなく食事です。アンデス山脈が三本も枝分かれして走るコロンビアには温泉がいくつもあります。だから温泉狂の僕にもあまり問題はありません。しかし毎日食べる食事は単純そのもので、一週間もすれば飽きてきます。どこの家庭やレストランでも、きまって牛肉、鶏肉、あるいは豚肉の焼いたものにご飯、ジャガイモ、小豆の煮汁、バナナのフライ、それに時々は少量のサラダが付いてくるといった具合です。それに比べると日本食は、素材、調理法ともに比較にならないほど多様です。だから和食料理の本を読んで自炊しています。しかし、ここはコロンビア、日本のようには食材が簡単には手に入りません。ただ、首都ボゴタの北地域には、日本料理店「京都」と韓国食材店があって、その二軒で醤油、とんかつソース、みりん、洋辛子、わさび、インスタント・カレー、味噌、昆布、わかめ、味付け海苔、紅生姜、大根、たくあん、鰻、日本米、インスタント・ラーメン等が売られています。おととい、「京都」へ行き、餅はないかと聞いたら冷蔵庫から出してきて売ってくれました。ぜんざいに合う小豆を見つけたので餅が要るんです。それに加え、白菜、柔らかいキャベツ、お好み?きに入れる山芋まで聞き回り、探し回って、入手できるようになりました。しかし家から遠いので、いつも大きなバックパックを背負って買い溜めに行っています。重い大きなバッグを持って小さなバスに乗るのは大変なので、小さなクルマがあれば便利だと思うようになりました。そんなことをしゃべっていると、クルマを運転できないMariaが免許証を持っていると言います。どうしたのかと聞くと、昔お父さんがくれたと言います。この国では免許証は買えると言うんです。Hernanにこの話をすると、彼の免許証も昔買ったものだと言います。そして彼は、僕のコロンビアでの外国人滞在許可証と血液型証明書のコピー、写真、それに7,500円出せば取ってきてやると言いました。6月9日のことでした。すぐには貰えませんでした。自動車教習所の生徒になっていたのです。一度も行きませんでしたが、一応教習時間に相当する日数だけ待つ必要があったのです。そして7月になりました。Hernanが、今月から法律が変わって運転適正検査が必要だと言いました。2,500円出してすぐに検査を受けに行きました。視力と聴力は日本と同じですが、反射運動神経や判断力についてはコンピュータ・グラフィックを使った検査で、パソコン・ゲームが得意な子供なら大喜びするような内容でした。パソコン・ゲームは殆どしたことがない僕ですが、なんとかパスしました。説明がスペイン語ということもあって、余計に疲れました。そんな訳で、1万円払って三年間有効の免許証を買ったわけですが、運転できないのでそのうち、Mariaと自動車教習所へ通おうと思っています。結局、何をしたのか意味不明ですが…
Guatavitaの中心部
借家はこの気持ちの良い道の上の方にある。
ボゴタでもう2年半近く暮らしましたが、大気汚染、騒音、それに少々物騒なので田舎の静かな町で暮らしたいと思っていました。しかしボゴタから遠く離れてしまうと日本の食材が手に入りません。そこでボゴタの北の郊外の町を見て回りました。なかなか適当な家が見つかりませんでした。そんな時、2年以上前に行ったことのあるGuatavitaという美しい村を思い出しました。ボゴタの中心部から東北東に70km離れた所にありますが、日本食材店まで行く時間はあまり変わりません。もともとGuatavitaには古い村があったのですが、ボゴタの水源確保のためにダムが造られ、ダム湖の中に水没してしまいました。その村にあったオベリスクは、今でも水位が下がると湖面に少し顔を出すと聞きました。今ある新しいGuatavitaはその代替地として39年前に建設されました。都市計画に基づいて整然と建てられた村で、建物は全て白壁にオレンジの瓦の屋根が乗っています。そこに緑の窓、戸、ベランダが彩りを添えています。今回、南北アメリカを一回りしましたが、こんな美しい村はメキシコで一ヶ所、コロンビアのベネズエラ寄りに2~3ヶ所見ただけです。また、この村から数km離れた山の頂上には円形の小さな湖があって、スペイン人が来る前に、インディオが湖中に黄金を沈める儀式を繰り返していたと言う伝説があります。エル・ドラード(黄金郷)という言葉はここから出たと言われています。湖中に眠る黄金を求めて、今まで何人もの人が、一攫千金の夢を果たそうと試みてきました。何年もかけて湖の一部を決壊させた人もいます。その度にいくらかの黄金や宝石が出てきたそうです。つい最近も道路補修工事中に金の三つの小さな彫像が発見されたそうです。近いうちに見に行こうと思っていたのですが、そのため今は立ち入り禁止になっています。
買おうと思っている土地。Guatavitaの中心部では一番展望が良い。
ボゴタから週末毎に一泊二日でMariaとこの村の貸家、売家を捜して二ヶ月通いました。適当な家が見つからないので、途中から家を建てるための土地捜しに変更しました。村の中で一番景色が良く、見晴台にもなっている2区画の土地がありました。村役場に行っても所有者を教えてくれませんでした。通い詰めるうちに常宿の主人が教えてくれました。ボゴタに住む所有者と会って9m×20mの1区画の土地を93万円で買う約束をしました。土地を確認するため、コロンビアの全ての地図を作っている役所へ行きました。Guatavitaと建設予定地付近の地図のコピーを貰うのに5~6回も通いました。この国では全てがゆっくり進みます。買おうと思っていた土地は一軒ぽつんと建っている人家の隣と聞いていたのですが、地図を見るとその隣の湖側の区画になっています。それなら20mの一辺の全てから湖が見下ろせるのでさらに好都合と思いました。ついでに人家との間にある土地の所有者が誰なのか、コピーを貰った地図局で教えてもらいました。Guatavita村の役場だと分かりました。村役場が家の谷間の土地を見晴らし公園として所有しておく訳がないので何かの間違いに違いない。であれば、これは後々問題になりそうだ。しかもこの村は景観保全のための厳しい建築基準があるので、役場がその気になればいくらでも建築を妨害できる。そこで、弁護士、それに買おうと思っている土地の所有者とも相談して村役場と正式に区画を交換する手続きをしました。今、村の建築諮問委員会の開催を待っているところです。区画を交換しようとする前に、一緒に土地を検分した村役場の建築技師は、役場の土地は将来誰かに売る可能性もあると言いました。それなら条件によっては役場の土地も含めて2区画を買おうかとも思っています。2区画とも買ってしまえば、将来にわたって隣に家が建てられる心配もなく、完全な展望が保証されます。近いうちに村長と会うつもりです。
このような手続き、それにいざ家の建築が始まれば近くに住んでいる方が何かと便利なので、2週間前にこの美しい村に引っ越してきました。ずっと借家を捜してきて5~6軒候補を見つけておきましたが、最後の最後に一日でいい家が見つかりました。庭付きの大きな部屋が4つもある家で家賃は月額12,000円です。庭のある家で住むのは、もちろん初めてで、天気が良い日は芝生に置いたビーチ・テーブルで朝食を戴いております。ここは北緯4度の熱帯ですが、高度が2,680mもあるので、昼間に陽が射すと暑いくらいですが、夜になると冷え込みます。ボゴタと違って回りに灯がないのと空気が澄んでいるので満点の星空が楽しめます。しかし寒いので夜はあまり外へ出る気がしません。今、暖房器具を捜しています。村は、週末には観光客が来て賑わいます。先週末は花火等の光の祭りが、きょうは日曜日で、村の広場ではコロンビアの民族舞踊祭りが開かれていました。しかし、平日の道にはクルマも人もほとんど見かけません。しかもこの村の大部分の道は、クルマ進入禁止の石畳が敷き詰められた歩道になっていて散歩には最適です。美しい町並みを、湖を見下ろしながら歩くのは贅沢そのものです。村中が静かで、昼間でも近所からは物音が聞こえてきません。それにボゴタと違って安全です。村人は口をそろえて、泥棒はいないと言います。ラテン・アメリカの大都会ではどこでも、安全の確保は非常に大きな社会問題なのです。
左が月額家賃12,000円の借家
通りから見た家の完成予想図。赤線で囲まれた部分が2区画の土地。
湖側から見た家の完成予想図
ここ2ヵ月半ほどは毎日、家の建築予定地を一つ見つけてはそこに建てる家の設計に追われてきて、スペイン語と料理の勉強も、本を読むこともできませんでした。家を建てるのは、ボゴタのHernanの家の建築で経験してもう懲りていました。しかし、Mariaの姉とその旦那はともに建築士で、僕を助けてくれるというので、もう一度元気を奮い起こして建てることにしました。今買おうと思っているGuatavitaの中心部では一番見晴らしの良い土地については、村人の間で地盤が軟弱で建物の建設には不適だという噂がありました。さっそく身内の建築士二人がGuatavitaまで来てくれて調べてくれました。問題はないそうです。二人には、素人の僕の下手な設計図面を書き上げる度に渡してきました。碁盤目が印刷された紙に書いてはスキャナーでパソコンに取り込み、それをPhotoShopで修正してきました。たいへん時間がかかります。そこで二人に建築設計ソフトを二本貰いました。引越しも終わり、そろそろ時間の余裕もできてきたので、まず簡単な方のソフトを勉強して、家の設計図面を書き直してみようと思っています。