アルヴィン・トフラーは20年近く前に、人類は農業革命、産業革命に次いで、情報革命という根底的な変革を受けるであろうと、彼の著書「第三の波」で予言した。
情報革命の根幹をなすのは、言うまでもなくコンピュータである。20年前といえば、私の職場では主記憶メモリーが磁気コアーで、磁気ディスクはというとたった50MBの記憶容量しかないのに大きさは冷蔵庫ほどもあるコンピュータを使っていた。それでも当時で5000万円もする高価なもので、テレビのように家庭で買えるような代物ではなかった。トフラーの予言は、当時はまだ夢物語のような非現実性を持っていた。
その頃世界のコンピュータ会社は、大規模なコンピュータの開発にやっきになっていたし、日本では最初の国家プロジェクトともいえる学習能力のある巨大なコンピュータの開発を総力を挙げて目指していた。一方、ビル・ゲイツは、このような大潮流を尻目にほそぼそとパソコンの開発を始めていた。そして今、トフラーの情報革命を現実のものとするのは、スーパーコンピュータではなく、パソコンであるのは誰の目にも明らかとなった。革命は、社会の片隅のとんでもないところから飛び出してきたのだ。ここに第二の波である産業革命の最終的代表選手であるクルマの次は巨大コンピュータとする日本の経済的野望は崩れ去ったのである。
今始まったばかりのこの情報革命は、産業革命の最終段階で出現してきた通信及びマスメディアに代表される情報伝達手段を全て統合し、世界中に張り巡らされた通信ネットワークを介して各家庭のパソコンで個人と個人、個人と組織が相互に情報を即座に交換し得るシステムを実現することになろう。電話、ラジオ、テレビ、ビデオ、新聞、雑誌、書籍はパソコンで処理されるようになるだろうし、そうなれば関連する情報産業は大変革を強いられるであろう。さらに図書館、役所の多くの事務業務、旅行関係の各種予約、電子ショッピング、電子決済のような金融に至るまで多くの産業を巻き込むことになろう。
第二の波である産業革命以後、人間は情報を求めて都市に集中してきた。その結果として世界中に人間の尺度を越えた巨大都市が生み出され、我々は住宅、交通、環境汚染、犯罪等様々な問題を抱えている。東京では都市のスプール化により、会社員は通勤のため時には毎日4~5時間も電車に閉じこめられている。これは人生の無駄であり、社会の無駄でもある。
人類の将来を大きく変えるこの情報革命が我々にもたらすものの中で最も重要なことは、情報革命はマスメディアに代表される組織からの個人への一方通行的な関係を打ち破るものである点にある。個人の情報を世界に発信させる手段は今までなかった。今、インターネットはその可能性を我々に実証している。世界中の一人一人ががマスコミの助けを借りずに情報を発信し、受信できるのだ。世界のどんな辺境にいても一人でなく世界と繋がっているのであれば、先に述べた都市への集中という問題も過去のものとなるであろう。情報革命が社会のマスコミからミニコミへの変化を保証するものであれば、マイノリティのエスペラントの舞台だ。我々は強力な武器を得たのだ。