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  1. (1) 2002年2月13日 Veracruzからのメール

  2. (2) Veracruzの救世主

(1) 2002年2月13日 Veracruzからのメール

ベラクルスでは2月5日からカーニバルが始まるというので、その日にベラクルスに入りました。また、ベラクルスにはSonyのサービス・センターがあるのでホテルを探す前に途中で立ち寄ったら、SonyのRuviというビデオカメラのインターフェース・カードはメキシコでは絶対に入手不能だと言われ、その代わり近所に住むコンピュータ狂を紹介してもらいました。訪ねていくとアパートに泊めてやるというので今日で6日間ここに居座っています。 この6日間で僕のPCを大改造しました。その結果、世界一のパワーを持つVaioに生まれ変わりました。Ruviのビデオも今までよりずっといい形で処理できるようになりました。ただ、少しお金がかかりましたが…

あと数日ここに泊めてもらってから、エスペランティストとこちらで遭った日本の若い女性に会うためにクエルナバカに向かいます。

メキシコのこの辺りは不思議と気温が低く肌寒いくらいです。そのせいか、10日ほど前に風邪を引いて、熱もなく大したことはないんですが、食欲はイマイチで身体もまだすっきりしません。これからメキシコシティーを目指し高地に向かえば気温がさらに下がるので、少し億劫です。

(2) Veracruzの救世主

ビデオ

ベラクルスに行くかどうかは非常に迷っていた。大きな街より田舎の静かな町を繋いでエスペランティストの待つクエルナバカに行きたいという気持ちが強かった。それに、まだ僕が若くて25か26才の時に、二回目の海外旅行でメキシコに来てベラクルスに行ったことがあり、あまり強い印象を持っていないからだ。加えて、ベラクルスではちょうど僕が着く頃の二月の五日からメキシコでは有名なカーニバルが始まり、ホテルが満室になるからだ。と言うことはホテルの料金も高くなるはずだ。しかし、そんなカーニバルなら見てみたいという気持ちもあって迷っていたのだ。また一方では、コルテスが初めてメキシコに上陸したベラクルスを、もう一度見てみたいとも思っていた。それよりもベラクルスに行くことを決めたのは、ベラクルスにSonyのサービスステーションがあるからだ。故障していると思われるSonyのビデオカメラRuviのインターフェース・カードは、カンクン以来ずっと探してきたが見つからなかった。メリダを出た後、そのインターフェース・カードの会社から海外には輸出していないので入手は不可能だというメールを受け取った。そうなるとメキシコのコンピュータ販売店でいくら探しても無駄だ。直接Sonyに行けばひょっとしてRuviを置いているかもしれない。そうすればほんとうにインターフェース・カードが故障しているのかどうかテストができる。それを確認してから日本に送り、修理に出すつもりだった。

ベラクルスの中心街のホテルに行く途中にSonyのサービスステーションがあったので寄ってみた。応対に出てきた技術者のRafaelは英語をしゃべり、日本にもいたことがあると言う。しかもインターフェース・カードはないが、彼も同じRuviを持っていると言うのだ。彼の診断では、Ruviのフィルムに相当するデータ・カートリッジはディスクのようなもので、インターフェース・カードではなく、このデータ・カートリッジが故障している可能性もあると言う。それで、彼にテストしたいから彼の壊れていないRuviを持ってきてくれるように頼んだ。Rafaelは快く引き受けてくれた。

翌日またSonyに彼を訪ね、テストしたらやはりデータ・カートリッジは壊れていない。もうインターフェース・カードの故障に間違いない。しかし、Rafaelはメキシコでは、まずないと言う。困った。すると、Rafaelはカードを持っている人物を知っていると言って、Sonyの委託業務をしているBillyを紹介してくれた。早速Billyに電話した。出ない。何回も電話して3時間後の夕方にやっと連絡がついた。Billyは流暢な英語をしゃべる上に、突然初めて電話しているのに、前からの知り合いとしゃべっているような、すごく親しい応対だ。日も暮れかけているので、住所を聞きすぐタクシーに乗って彼のアパートに行った。玄関のベルを押すと二回のベランダから顔を出し、旧友に会ったような歓迎だ。彼のアパートの部屋に入る。入ったところは大きな居間になっていて、そこにディスクトップのPC二台とPCに接続されたオーディオセットが並んでいる。PCは全て彼の自作だ。Billyに壊れたインターフェース・カードを見せ、旅行には全てが小さくなければならないと言っていると、彼はカードではないタバコの箱よりももう少し大きなビデオ・キャプチャー装置を出してきた。僕と同じカードは持っていないと言う。少し失望したが、この際仕方がない。結局その装置は僕のPCでは動かなかった。僕が落胆しているのを横目に、Billyは今度はビデオテープ大の装置を出してきた。図体が大きいのは大いに不満だが、ないよりましだ。これで一応Ruviの動画を静止画としてVaioに取りこめた。しかも、この装置ではRuviの30分ビデオを500MBにまで圧縮できると言う。でも、そんなことは僕には関係ない。僕のディスクは12GBで、今、空き容量はあと3GBもないのだ。するとBillyは40GBのディスクが入ったドライブを出してきた。そしてその40GBのディスクはたまたまVaioに装着できると言う。それほど大きなディスクなら、Ruviで撮ったビデオは今後何年間分をそのままディスクに書き出せる。今までは撮影した30分ビデオはコピーして保存できないものだから、次に上書きされてなくなる前に静止画として切り出し、場所をと日付を書き加えて保存してきた。消えてなくなると思うとついつい欲が出て、切り出す静止画の数が増え、そのためこの作業にかなりの時間を費やしてきた。しかし、もうその必要はない。ホームページや将来の旅行記録とし必要な写真は、いつでも動画から取り出せる。これは革命だ! このシステムを完成させるのにはもう少し時間が必要だ。近くのホテルに移ってくると言うと、驚いたことに、Billyは自分のアパートに泊まればよいと言ってくれる。奥さんと二人の可愛い娘さんは、今アメリカ、テキサス州のサン・アントニオに帰省しているので、僕も気を使うことはない。翌日Billyのアパートに移ることにした。

Billyのアパートに行き、BMWを彼のぼろクルマの前に駐輪した。僕には娘さんの部屋が与えられた。その部屋で結局八泊もさせてもらった。こんなことは親切な日本でもなかなか起こることではない。アメリカやカナダでは考えられないことだ。Billyの両親はパレスチナ人で、いろいろな国に移り住んだらしい。Billyもエジプトで18年間生まれ育った後、しばらくの間地中海の島で暮らし、その後アメリカで11年。メキシコに移り住んで8年で、今37才になる。自分も世界を旅してきたので旅人は大事にしたいと言う。しかし、見ず知らずの人間をたやすく自分の家に泊めるのは、僕もいろいろな国を旅したことがあるが、こんなのは初めてだ。本で読むとイスラム圏の人達は、自分達も旅の人生を送ってきたので、旅人には自分のための分しかない食料でも旅人に与えると書いている。僕への招待にはそんな文化的背景もあるのかと聞いて見たら、それも多分あるだろうけど、もっと個人的なことも多く、人生はお金ではなく、自分が他人のために何かできたらそれは喜びであり、意味のあることだと彼は言う。特に一、二ヶ月前に交通事故で奥さんを亡くしかけたことをきっかけに、そういう心境が強くなったと言う。心の美しい人だ。

このベラクルスの救世主の助けで僕のPCは生まれ変わった。

新しいPCシステム ①Sony Vaio、②CD-RW、③12GB外付けディスク、④モデム・チェッカー、⑤全世界対応モデムカード、⑥LANカード、⑦壊れたビデオ・インターフェース・カード、⑧新しいビデオ・インターフェース装置、⑨SonyビデオカメラRuvi、⑩最新式Sonyオーディオ・イヤーホーン

内臓ディスクが40GBのラップトップ・コンピューターは今のところ何処にも売っていない。元々内臓されていた12GBのディスクは外付けディスクとして、ビデオのバックアップに使う。そのうち外付けディスクが一杯になったら、保存のためCD-Rにコピーして日本に送るつもりだ。残るのは実装メモリーの問題だけだ。二年ちょっと前に買った僕のVaioのメモリーは64MBで、メモリー不足のためよくフリーズする。日本で買ったときにメモリーを増設しておけばよかったと、ずっと思っていた。今、Billyから128MBの増設メモリーが送られてくるのを待っている。そんなことよりもBillyとの出会いで生まれた最大の成果は、今持っているVaioが旅先で壊れた場合の修理や買い替えがBillyに頼めば簡単にしかもすぐ解決されることだ。彼は仕事を全てインターネットでしていて、世界中に僕のような顧客を持っている。日本製のノートパソコンを扱っている唯一のアメリカのディーラーからもすぐ日本製のノートパソコンを発注し、僕が世界の何処にいても確実に届けてくれる手順を彼は知っている。Billyがいるから僕はもうVaioが壊れてもわざわざ日本に帰ってVaioを買う必要はない。Sonyは潰れたら日本に送り返せ、外国では日本製Vaioは入手不能と言っていた。日本で一番まともなSonyだってこのとおり無責任だ。世界の巨人IBMが素人の若者ビル・ゲイツに倒されたのを訳を、Sonyもまだわかっていない。 日本のPC環境の弱点は、アフターサービスだけではない。メキシコでは宇宙通信も含め、通信環境は日本を上回っている。

①全世界対応モデム・アダプター、②全世界対応電源プラグ

日本人の多くは、日本がまだ一番進んでいると勝手に思い込んでいる。日本の本当の危機は、実は組織と個人双方が持つ、こうした安住と時代錯誤にあると思う。原因はNTTにあるのは間違いないが、日本の通信環境は料金体系も含め、メキシコ以下のレベルであることをみんなが認識しなければならない。 ベラクルスではBillyの友達にもたくさん会った。Solinは27才でBillyの相棒だ。彼はBillyのアパートに突然現れては勝手に冷蔵庫を開け、自分の食事を作ってはBillyのPCで新しい音楽を作曲している。また、耳鼻咽喉科の医師Raulは内視鏡で撮影したビデオ画像等をコンピュータで管理している。このシステムはBillyが開発したらしい。この二人にはバラクルスにいる間、毎日のように会った。彼らも僕の大事な友達だ。Billyのビデオ・キャプチャー装置を無理やり売ってもらったら、Billyはついでにビデオ編集の仕方も教えてくれた。それで僕のホームページにビデオを載せた。Billyのサービスは完全に日本のPCメーカーを超えている。PCを十二分に活用している音楽家のSolin、医師のRaulを見る時、本当に日本は大丈夫なんだろうかと思う。

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