ボルツマン分布

Boltzmann distribution

エアロゾル粒子は、電離放射線(α線、β線)や放電により生成されるイオンにより荷電される。その内、正電荷をもつイオンと負電荷をもつイオンが1対1で混在するイオン(両極イオンと呼ぶ)による荷電を両極拡散荷電と呼ぶ。ボルツマン分布はクヌーセン数Kn)がKn<<1のときに、この両極拡散荷電により到達すると考えられている平衡帯電量分布であり、次式で表される(文献1)。

ここで、pは粒子が持つ電荷数、npp帯電粒子の個数濃度、nTは全粒子個数濃度、Dpは粒子の直径、ε0は空気の誘電率(=8.854×10-12 Fm-1)、eは電気素量(=1.6021×10-19 C)、kはボルツマン定数である。

 この分布は、正イオンと負イオンの動力学物性が同じであるとの仮定の元で成立するが、実際のイオンは極性によりその動力学物性が異なる。このため、ボルツマン分布は実際には存在しない帯電量分布であり、実際の帯電量分布は図1に示すようにFuchsの荷電理論に基づく平衡帯電量分布となる(文献2, 3)。

図1 Fuchs理論に基づき正負イオン物性の違いを考慮して求めた平衡帯電量分布(実線)とボルツマン分布(点線)と実験結果の比較 (文献3)

文献1:Gunn, R.,Diffusion charging of atmospheric droplets by ions, and the resulting combination coefficients. J. meteorol., 11(5), 339-347,1954.

文献2: M. Adachi, Y. Kousaka and K. Okuyama, Unipolar and bipolar diffusion charging of ultrafine aerosol particles, J. Aerosol Sci., 16 109-123., 1985.

文献3:足立元明、粉体工学の基礎(粉体工学の基礎編集委員会編)、pp. 86-93、日刊工業新聞社1992.

(大阪府立大学・足立 元明) 2016年4月21日   ★