単散乱を仮定したミー散乱ライダーの方程式には、消散係数と後方散乱係数の2つの未知数を含む。そこで、Fernald(1984)は、消散係数と後方散乱係数の間に線形の関係(ライダー比)を仮定することで、解を得る手法を開発した。ライダー比は、エアロゾルのサイズ、種類、形状により10~100 srの範囲で変化する。サンフォトメータ等で得られる光学的厚さのデータがある場合は、Fernald法から得られた消散係数の高度積算値がその光学的厚さと一致するようにライダー比を求めることができる。但し、その場合は、高度方向にライダー比が一定であると仮定する必要がある。また、ラマンライダーや高スペクトル分解ライダーの計測より、計測からライダー比を求めることが可能である。その他、スカイラジオメータなど他の観測データから得られる粒径分布と複素屈折率を用いて、理論的に計算する試みも行われている。一般的に、光吸収の少ない粗大粒子のライダー比は小さく、光吸収が大きい粒子を多く含むほどライダー比の値は大きくなる。
Fernald, F.G.: Analysis of atmospheric lidar observations: some comments, Appl. Opt., 23, 652-653, 1984.
(京都大学・矢吹正教) 2016年5月1日 ★