レイノルズ数(Re)は流体力学において最も重要な無次元数(次元を持たない物理量)であり,慣性力と粘性力との比で
として表される。ここでρは流体の密度[kg/m3],Uは流体の代表速度[m/s],Lは代表長さ[m],μは流体の粘性係数[Pa・s]である。代表長さは幾何学形状によって慣習的に決められている。幾何学的に相似な流れでは,Reが同じであれば, 2つの流れは等しいと考えることができ,このことをレイノルズの相似則と呼んでいる。そのため,Reを等しくすることで規模が小さな実験装置を用いて,大規模な装置の流れを再現することができる(線形であれば)。
Reは流れの層流と乱流の判別にも使用される。円管内の流れの場合では層流から乱流に遷移するReは,2,000~4,000 程度というのが一つの目安になっている。
気体中で運動する粒子の場合においてもReが定義でき
と表すことができる。ここで,代表速度は粒子と流体の相対速度Ur [m/s],代表長さは慣習として粒子の直径Dp [m]を用いる。粒子周りの流れはRep<0.1の時には粒子の上流側,下流側ともに対称形の滑から流線を描く層流(図(a))になるが,Repが約1よりも大きくなってくると粒子の下流部に図(b)のような渦が形成するようになる。更にRepが大きくなると渦の数が次第に多くなり,最終的にRepが500以上になると乱流に発達する。粒子と円管の流れの層流領域の上限が大きく異なっているのは,円管では壁面に沿って直線的に流れが生じるが,粒子周りは曲線的流れであり,慣性力がより重要になってくるためである。
参考文献
日本エアロゾル学会(編)『エアロゾル用語集』、気体と微粒子の相互作用、40-41、京都大学学術出版会、2004.
W. C.ハインズ(早川一也 監訳),エアロゾルテクノロジー,23-26, 井上書院、1985.
日本エアロゾル学会(編)・高橋 幹二 (著)、エアロゾル学の基礎、13-16、森北出版、2003.
高橋幹二著,基礎エアロゾル工学,13-16,養賢堂、1978.
W. C. Hinds, Aerosol Technology: Properties, Behavior, and Measurement of Airborne Particles 2nd, 27-31,Wiley-Interscience , 1999.
(群馬大学・原野 安土) ★