溶液滴の平衡水蒸気圧e's(r)は,相反する2つの効果,つまり,水滴の曲率効果による平衡水蒸気圧の増加と溶質効果による平衡水蒸気圧低下を組み合わせて表現することができる。水滴半径rが極端に小さくならならなければ,
で近似できる。ここでaは溶液の表面張力などで決まる係数で,bは溶質の種類や量で決まる係数で,弱い温度依存性がある。これはケーラー理論と呼ばれる。
この近似式の中で,a/rは水滴の曲率効果の項で,半径の減少による飽和比の増加を表す。
一方,-b/r3は溶質効果の項で,半径の増加(溶液濃度の減少)による飽和比の低下を表している(溶質効果が弱まり、飽和比が1に近づく) 。上式は平衡飽和比の溶液滴の大きさに対する依存性を示す。図中の実線は10-16gの硫酸アンモニウム粒子上に生成する溶液滴の大きさに対する平衡飽和比を示したもので,このようなグラフはケーラー曲線(Köhler curve)と呼ばれる。
参考図書
Pruppacher,H.R. & J.D. Klett, Microphysics of Clouds and Precipitation, Kluwer Academic, 954p, 1997
Rogers,R.R. & M.K. Yau, A Short Course in Cloud Physics, Butterworth-Heinemann, 304p, 1989
(気象研究所・村上正隆) 2022年4月15日 ★