エアロゾルや微量ガスが雲底下で降水粒子に取り込まれる過程(雲内洗浄:図1を参照)であり,衝突洗浄(impaction scavenging)である.衝突洗浄は,ブラウン拡散(Brownian diffusion),さえぎり(interception),慣性衝突(inertial impaction),泳動(phoresis)による(雲内洗浄:図2を参照).図1には,霧雨によるエアロゾルの捕捉効率をブラウン拡散と慣性衝突から求めた理論曲線を示すが,粒径が小さいほど(0.1 µm未満),粒径が大きいほど(2µm以上)エアロゾルの捕捉効率は増加する.0.1 µm未満の核生成モードの微小粒子(超微小粒子;ultrafine particle)ではブラウン拡散が支配的であり,2 µm以上の粗大粒子ではさえぎりと慣性衝突が支配的である.
0.1 – 2 µmの蓄積モードの微小粒子はエアロゾル捕捉効率が最も低い.この領域ではブラウン拡散とさえぎりが主な捕捉機構であるが,ブラウン拡散は0.05 µm以上では低く2,さえぎりの効果も小さい.このように,エアロゾルの捕捉効率が低い領域をグリーンフィールドギャップ(Greenfield gap)という.グリーンフィールドギャップでは泳動の寄与が大きくなる.
図1 霧雨によるエアロゾル粒子の捕捉効率(文献1を元に作成)
参考図書
1. Lamb, D., Verlinde, J., Physics and Chemistry of Clouds, pp.484-500, Cambridge University Press, 2011.
2. Seinfeld, J.H., Pandis, S.N., Atmospheric Chemistry and Physics. Second Edition, pp. 900-927, John Wiley & Sons., Inc., 2006.
(早稲田大学・大河内博) 2016年5月9日 ★