防じんマスクは、有害なエアロゾルが発生する環境で、作業者の吸入ばく露を防止するために用いる呼吸用保護具の1種である。呼吸用保護具は、図1のように有害な物質を含む空気を“ろ過”して呼吸をする「ろ過式」と、ボンベやホースなどによって有害な物質を含む空気とは別なところから呼吸のための空気を供給する「給気式」に分けられる。
ろ過式の呼吸用保護具である防じんマスクは、環境中の微粒子に対する防御を行うために使用される。また防じんマスクは、労働安全衛生法第44条により型式検定を受けなければならない。その性能基準は明確に定められ、登録型式検定機関である公益社団法人産業安全技術協会により検定試験と市場買取り試験が行われている。型式検定に合格したマスクにはその証となるシール(型式検定合格標章、写真1参照)が必ず貼られている。
防じんマスクは、その構造とろ過材の捕集効率により表1のように12種の区分に分けられている。ろ過材を交換してマスク本体はそのまま使用する“取替え式(R)”と、ろ過材がマスク本体と一体化しており、使用毎にマスクを廃棄する“使い捨て式(D)”に分けられる。またろ過材の性能は、国家検定で定められた試験粒子である塩化ナトリウムまたはフタル酸ジオクチルで評価され、捕集効率ごとに3ランクに分類されている。ここで塩化ナトリウム粒子は“固体粒子(S)”、フタル酸ジオクチル粒子は“液体粒子(L)”となる。捕集効率による区分は、80.0、95.0、99.9 パーセントの3つである。以上より、使い捨て式防じんマスクにはDS又はDL1から3、取替え式ではRS又はRL1から3の区分があり、作業環境に適した製品を使用する必要がある。なおフタル酸ジオクチル粒子による捕集効率試験に合格したマスク(DL又はRL)はどのような粉じん環境でも使用できるが、塩化ナトリウム粒子による捕集効率試験に合格したマスク(DS又はRS)は、オイルミストが存在する環境では使用できない。
なお、「吸気補助具」とは、作業者が呼吸をする際に吸気抵抗を低減するために、面体内に送風する小型の送風機であり、バッテリなどの電源が必要となる。
図1 呼吸用保護具の種類
写真1 型式検定合格標章の例
表1 防じんマスクの性能区分