海塩粒子

sea salt particle

大気中に浮遊する海水由来のエアロゾル粒子。海上の風速が強い時に、波頭が砕けて海水に泡が混入し、その泡が海面で弾ける際に、直径0.1から10 µm程度の海水飛沫が大気中に放出される。さらに風速が強くなると、波頭がちぎれ飛ぶことで、より大きな海水飛沫も生成される。海上風速の増加に伴い、海塩粒子の生成量は指数関数的に増える。放出された直後のエアロゾル粒子は液滴だが、低湿度の条件下では次第に水分が蒸発し、固体のエアロゾル粒子として存在することもある。海塩粒子の生成機構や粒径分布、沿岸都市大気中での変質、気候影響などについて、角脇(1991)や三浦(2007)による解説の他、参考文献に示した参考書と「エアロゾル研究」35巻3号に掲載の特集記事(海洋性エアロゾルの生成・動態・気候影響)に詳しい記載がある。

また、海塩粒子の主要化学成分は、生成直後には海水中での成分比にほぼ等しい。海水中の主要化学成分の濃度は、下記の参考書の他、理科年表やKeenら(1986)が参考になる。 

写真 強風時の海水面

海面に浮かぶ白い泡と、波頭が風で吹き飛ぶ様子がわかる。(撮影:長田和雄) 

参考文献:

海塩粒子、エアロゾル用語集、164-165、日本エアロゾル学会(編)、京都大学学術出版会、2004.

海塩エアロゾル、『地球と宇宙の化学事典』、191-192、日本地球化学会(編)、朝倉書店、2012.

角脇 怜、大気中の海塩粒子、エアロゾル研究、6(2)、113-120,1991.

DE LEEUW, Gerrit, et al. Production flux of sea spray aerosol. Reviews of Geophysics, 2011, 49.2.


LEWIS, Ernie R.; SCHWARTZ, Stephen E. Sea salt aerosol production: mechanisms, methods, measurements, and models-A critical review. American Geophysical Union, 2004.


KEENE, William C., et al. Sea‐salt corrections and interpretation of constituent ratios in marine precipitation. Journal of Geophysical Research: Atmospheres (1984–2012), 1986, 91.D6: 6647-6658.

三浦和彦、海塩粒子の生成と化学・物理的性質、日本海水学会誌, 61, 102-109, 2007.


(名古屋大学・長田和雄) 2016年3月30日  2022年7月16日更新 ★