電気集塵
Electrostatic precipitation
Electrostatic precipitation
空気あるいは排ガス中に浮遊する粒子をコロナ放電で発生したイオンにより荷電させることで,粒子をクーロン力により気流中から分離させ,集塵極で捕集する技術を電気集塵という(図1)。高効率捕集が可能でありフィルタ式の集塵に比べ圧力損失が低いことから,工業設備の排ガス処理装置や室内用空気清浄装置などに利用されている。電気集塵の性能は粒子径の影響に加え,粒子の電気的特性による影響を受ける。粒子の見掛け電気抵抗率が1×102 Ω・m2以下の場合には,集塵極での粒子の捕集と再放出を繰り返すジャンピング現象が起こり集塵効率が低下する。また,5×108 Ω・m2以上の場合には,帯電した粒子が集塵極に堆積して粒子層内で電位が急激に降下し,放電極と集塵極間の十分な電位差がなくなり集塵性能が低下する。さらに帯電粒子が粒子層に蓄積すると,粒子層内で絶縁破壊が生じて逆極性の放電が発生し,著しく集塵効率が低下する。これらの集塵効率の低下を抑制する方法としては,粒子の見掛け電気抵抗率が集塵に最適な範囲になるように,温度・湿度を制御することや添加物の注入,パルス荷電方式の導入などが行われている。また,集塵極に集塵された粒子を除去する方法として,工業用電気集塵装置では,ハンマーで電極を槌打し除塵する乾式法,電極を水で洗浄・除塵する湿式法,およびブラシにて掻き落とす移動電極方式が用いられている。
図1 電気集塵装置による微粒子の集じんの様子
(参考文献)
金岡千嘉男,牧野尚夫(編著),はじめての集じん技術,p.62,日刊工業新聞社,2013.
野田直希,牧野尚夫,電気集塵技術の最新動向,エアロゾル研究,35(2),105-109,2020.
(大阪公立大学・黒木智之) 2022年4月13日 ★