エアロゾルの沈着メカニズムのなかで、拡散沈着に支配される粒子を分離する装置である。これは粒径の小さな粒子ほど拡散係数が大きく、捕集されやすいことを利用した分級方法である。目的とする粒径範囲に合わせて、装置サイズや流量などを最適化する必要がある。ただし、流れが乱流とならないように捕集流量を決めることが粒径解析上有効である。基本タイプは、1)集束チューブ型、2)平行平板型、3)スクリーン型の3つである(図1参照)。
図1 拡散バッテリーの基本3タイプ
1) 集束チューブ型
チューブの入り口と出口での粒子濃度を測定する。長いチューブを1本使うか、n本の短いチューブを並列に配置し、それぞれのチューブにサンプリング流量を1/n流しても同じ結果が得られる。粒子通過率Pは次式で与えられる。
P = 1 - 5.50µ2/3 + 3.77µ (ただし、µ<0.007)
P=0.819exp(-11.5µ) + 0.0975exp(-70.1µ) + 0.0325exp(-179µ) (ただし、µ>0.007)
ここで、
µ:沈着パラメータ、D:粒子の拡散係数、L:チューブの長さ、
dt:チューブ径、U(_):チューブ内平均流速、Q:チューブ内体積流量
2)平行平板型
矩形のプレートを層状に重ねてできる間隙空間を流路とする。粒子通過率Pは次式で与えられる。
P=1 - 2.96µ2/3 + 0.4µ (ただし、µ<0.003)
P=0.910exp(-7.54µ) + 0.0531exp(-85.7µ) + 0.0153exp(-249µ) (ただし、µ>0.003)
ここで、
µ:沈着パラメータ、D:粒子の拡散係数、L:流れ方向の経路長、
W:すべての経路の総幅、h:プレート間隔、Q:体積流量
3)スクリーン型
目の細かい金網を重ね合わせて配置する。粒子通過率Pは次式で与えられる(Cheng and Yeh, 19801))。
α:スクリーンの空隙率、L:スクリーンの厚さ、D:粒子の拡散係数、
dw:スクリーン針金の直径、U(_):スクリーン内平均流速
直列式:通過するエアロゾル個数濃度を測定する。
並列式:通過するエアロゾル個数濃度または沈着するエアロゾル個数濃度を測定する。
GSA(Graded Screen Array)2):放射性エアロゾルをターゲットとした拡散バッテリである。放射性エアロゾルを測定するために、通過したエアロゾルではなく、スクリーンメッシュに沈着した放射性エアロゾルの放射能を測定する。そのため、同一スクリーンを多数枚重ね合わせる方法ではなく、様々な種類のスクリーンを1枚ずつ組み合わせることで、拡散バッテリを構成する。
これら基本タイプの特徴を以下の表にまとめる。
拡散バッテリの測定値から、粒径分布を求めるためには、変換プログラムが必要である。計測データと求められる粒径分布との関係を図2に示す。
参考文献
Hinds, W.C. (1982) Aerosol Technology. John Wiley & Sons
References
1) Cheng, Y.S. & Yeh, H.C., Theory of a screen-type diffusion battery. J. AerosolSci. 11:313-320, 1980.
2) Knutson, E. O., George, A. C. and Tu, K. W., The graded screen technique for measuring the diffusion coefficient of radon decay products, Aerosol Sci. Technol., 27:604-624, 1997.
(放射線医学総合研究所・福津久美子) 2016年5月2日 ★