慣性衝突

Inert impaction

 運動しているエアロゾルは慣性を持っているため,流れの急速な方向変化についていけず、流路の壁等に衝突してしまう。これを慣性衝突と呼ぶ。慣性衝突はエアロゾルの曲線運動を利用したもので,エアロゾルの捕集や粒径の分級などに広く用いられている。

 図1に示す慣性インパクターは慣性衝突の原理を用いてエアロゾルの採取を行う装置である。エアロゾルを含んだ気流がノズルを通過し,その後平板により急激に曲げられると、エアロゾルは曲がりきれずに気流から外れ,捕集板に衝突してしまう。そのようにして捕らえたエアロゾルを分析することでエアロゾルの研究が行なわれている。また,吸引する流量やノズルの直径を換えることで捕集できるエアロゾルの大きさを調整できることから粒子の分級も行うことができる。

 エアロゾルのフィルター捕集原理は,さえぎり,慣性衝突,拡散,静電気力に大別できる。図2は単一繊維における慣性衝突によるエアロゾルの捕集を模式的に示したものである。エアロゾルは繊維近傍での気流の曲線変化に追従できず,流線を横切って繊維に衝突し捕集される。

参考文献

日本エアロゾル学会(編)『エアロゾル用語集』、慣性運動・沈降、42-43、京都大学学術出版会、2004.

W. C. ハインズ(早川一也 監訳)、エアロゾルテクノロジー、41-45、井上書院、1985.

日本エアロゾル学会(編)・高橋 幹二 (著)、エアロゾル学の基礎、13-16、森北出版、2003.

高橋幹二著、基礎エアロゾル工学、13-16、養賢堂、1978.

S.F. Friedlander, Smoke, Dust, and Haze: Fundamentals of Aerosol Dynamics 2nd, Oxford University Press, 2000.

W. C. Hinds, Aerosol Technology: Properties, Behavior, and Measurement of Airborne Particles 2nd, 42-46,Wiley-Interscience, 1999.


(群馬大学・原野 安土)   ★