エアロゾル粒子を自然起源か人為起源かで区別した呼び方。
天然の発生源と人為的な発生源とで区別したエアロゾル粒子の年間生成量を、下にまとめた(Warneck & Williams, 2012)。
1)最良と思われる見積もり値を示し、括弧書きでその範囲を示した。
2)Andreae (1995)以後に出版された複数の文献値による最小値と最大値を転載。
3)この見積もりには黒色炭素を含んでいないが、一次・二次粒子を含む
出典:Warneck & Williams, 2012
自然起源
鉱物粒子:地球規模で見ると、サハラ砂漠やゴビ・タクラマカン砂漠などが主な発生源である。
海塩粒子:風速の強い海域で大量に発生する。
火山:一次粒子として火山灰が放出され、火山ガスとしてのSO2は大気中で硫酸塩を生ずる。
生物粒子:花粉や胞子、バクテリアが含まれる。
生物起源ガスからの硫酸塩:海洋プランクトンの一部が放出するジメチルサルファイドが大気中で酸化することで生成する。
生物起源の非メタン炭化水素からの生成物:植物から放出されるイソプレンやテルペン類の酸化により生成する。
雷など自然現象に由来するNOxからの硝酸塩:大気中での酸化により硝酸塩を生成する。
人為起源
産業ダスト:輸送や種々の工業活動、セメント生産、廃棄物燃焼などにより生成したもの。
燃焼:野焼きや森林火災などのバイオマス燃焼は、一次粒子の他にガス状の揮発性有機物質をもたらし、大気中での酸化による二次生成からエアロゾル粒子が生成する。
人為起源SO2からの硫酸塩:化石燃料中に含まれる硫黄分の燃焼により放出されたSO2が、大気中で酸化されて硫酸塩を生じる。
非メタン炭化水素の酸化生成物:揮発性の燃料や溶剤などの非メタン炭化水素が大気中で酸化して半揮発性あるいは不揮発性の有機物を生じる。
人為起源NOxからの硝酸塩:燃焼由来のNOxの酸化により大気中で硝酸塩を生成する。
なお、上記の表には含まれていないが、農業活動や養鶏・畜産、土壌、一部の海洋から放出されるアンモニアガスが、硫酸や硝酸などの酸性成分と反応して粒子化することも、エアロゾルの重要な供給源である。
参考文献
Andreae, M. O. Climatic effects of changing atmospheric aerosol levels. World survey of climatology, 16, 347-398, 1995.
Warneck, Peter, and Jonathan Williams. The Atmospheric Chemist’s Companion: Numerical Data for Use in the Atmospheric Sciences. p133-134, Springer Science & Business Media, 2012.
笠原三紀夫、大気圏エアロゾルの化学組成と発生機構、発生源、エアロゾル研究、11(2)、120-126,1996.
(名古屋大学・長田 和雄) 2022年4月7日微修正 ★