PM10 、PM2.5 、PM1 

 PMは「Particulate Matter」の略で、日本語では粒子状物質のことである。粒子状物質は、直径をnm(ナノメートル:1ミリメートルの1,000,000分の1)からμm(マイクロメートル:1ミリメートルの1,000分の1)で表すような大きさである。エアロゾルの物理的、化学的性質や環境、健康への影響を理解するためには、粒子の大きさ(粒径)の情報が重要となる。そこで、空気動力学径に基づいて分級したものをPM10、PM2.5 、PM1 などと表記する。

 PM10 は空気動力学径として粒径10 µm以上の粒子を50 %カットした粒子状物質を表し、同様に、PM2.5 は空気動力学径として粒径2.5 µm以上の粒子を50 %カットした粒子状物質、PM1 は空気動力学径として粒径1 µm以上の粒子を50 %カットした粒子状物質を表す。この時、分級効率が100%ではなく50%となっているのは、分級したい粒径に対して分級装置を用いた場合に、分級装置の特性からその粒径以下の微小粒子を完全に分級することは困難であることに起因する。大気環境基準のところで示したように、PM2.5 PM10は日本以外の各国(米国、EU、韓国、中国)で環境基準として採用されているが、日本ではその歴史からPM2.5 のみを環境基準として採用しており、粗大粒子を含む粒子状物質については「浮遊粒子状物質(SPM)」が環境基準として用いられている。PM10とSPMはその定義から対応する粒径が異なり、SPMは PMPMのレベルに相当することから、含まれる粒子径の範囲はPM10よりやや小さくなる。

大気エアロゾルの主な発生源で示したように、PM2.5は主に人為起源の微小粒子であり、PM10にはこのPM2.5に加え、主として自然起源の粗大粒子が含まれる。PM2.5の分級捕集においては、自然起源の粗大粒子が一部混入してしまうことが報告されており、人為起源の微小粒子を厳密に分析したい場合などにはPM1 が用いられる。


参考文献

・日本エアロゾル学会 畠山史郎・三浦和彦(編著)、『みんなが知りたいPM2.5 の疑問25』、14-16、成山堂書店、2014.

・米持真一, 梅沢夏実, PM2.5との通年並行観測による大都市郊外のサブミクロン粒子(PM1 )の特性解明, 大気環境学会誌, 45, 271-278, 2010.


(埼玉大学・関口和彦)2016年4月28日、2022年4月30日微修正  ★