エアロゾルの粒径分布は、多くの場合に粒径範囲に幅のある多分散(polydisperse)であり、粒径範囲が非常に狭い粒子で構成される単分散(monodisperse)であることは少ない。エアロゾル発生源や動態の多様性により、複数のピークからなる多峰性の分布(multimodal distribution)を示すこともある。多分散での粒径範囲は、2桁以上の広い幅を示すことも多い。粒径分布の形状は、対数正規分布で近似されることが最も多いが、なぜ近似されるかについての理論的根拠はない。ある特定の状況下で適合することが見いだされている粒径分布としては、Rosin-Rammler分布1)、Nukiyama-Tanasawa分布2)、べき乗分布、指数分布がある。
対数正規分布は、横軸を対数とした時に正規分布となる(図1)。対数は自然対数、常用対数いずれを用いてもよいが、一般的には自然対数が用いられる。
図1 頻度分布曲線の例
対数正規分布関数から、幾何平均径dg(geometric mean diameter)、幾何標準偏差σg(geometric standard deviation, GSD)は以下の式で求められる。エアロゾル個数濃度の場合、対数正規分布では、dg=CMDの関係が成り立つ。
対数正規分布で粒径を分析する場合、対数確率紙を用いることでCMDとGSDを直接求めることができる(図2参照)。
図2 対数確率分布図
分布形状が正規分布の場合、その標準偏差は累積確率84.1%と中央値50%との差または中央値50%と累積確率15.9%との差で表される。従って、対数正規分布に従う粒径では、標準偏差は以下の式で表される。
対数正規分布の場合、どのような重み付き分布としても幾何標準偏差が常に同じになるという利点がある。また、Hatch-Choateの変換式1)を用いることで、重み付き分布を求めることが簡単にできる。
ここで、bは変換形式のみに依存する定数であり、平均径dAの形式のみにより決まる。変換形式の如何を問わず、2つの直径の比は、σgの値のみによって定まる。
個数中央径(CMD)を重みdqの重み付き分布の中央径(qMD)に変換するための変換式を一般形で表すと、
例えば、質量中央径(MMD)の場合はb=q=3、表面積中央径(SMD)の場合はb=q=2となる。
個数中央径CMDをdq の重み付き分布の平均径(dqm)に変換する式は、
個数中央径CMDをdp の平均値に対応する直径(dp 平均径)に変換する式は、
例えば、長さ平均径はp=1、表面積平均径はp=2、質量または体積平均径はp=3とする。
最頻値dは、
重みqの重み付き分布p次のモーメント平均の変換式の一般形は、
図3に、個数分布のグラフ上に各種の平均径の名称と数式を示した。
図3 個数粒径分布に対する種々の平均径と数式
参考
Hinds, W.C. (1982) Aerosol Technology. John Wiley & Sons
References
1) Rosin, P. & Rammler, E. (1933) The laws governing the fineness of powdered coal. J. Inst. Fuel 7:29-36.
2) Nukiyama, S. & Tanasawa, Y. (1939) Experiments on the atomization of liquids in an air-stream. Trans. Soc. Mech. Eng. Jpn. 5:68-75.
(放射線医学総合研究所・福津久美子) ★