元素状炭素(Elemental Carbon;EC)と有機炭素(Organic Carbon;OC)の揮発温度の違いを利用して両者を分別し,定量する方法を熱分離法という.ただし,OCの一部は加熱によって熱分解して炭化し,ECと同様な性質となるため,ECが過大評価される.そこで,ECが可視光を吸収することを利用し,この過大評価を補正するのが熱分離・光学補正法である.
分析中の試料の反射光および透過光強度が炭化によっていったん低下した後,炭化したOC及びECが揮発することで上昇する途中,分析開始時の強度になる瞬間がある.ここまでに検出された炭素をOCと定義して補正する.反射光により補正する方法をTOR(Thermal Optical Reflectance),透過光により補正する方法をTOT(Thermal Optical Transmittance)と呼んでいる.
なお,厳密には,揮発した炭素が水素炎イオン化検出器(FID)に到達するまでには一定の時間を要するため,この時間遅れ(Sample transit time)を考慮して補正する.そのため,この時間遅れを正確に把握して設定することが重要となる.
参考文献
長谷川就一:入門講座PM2.5 ―第2講 PM2.5の測定・分析と実態―,大気環境学会誌, 45, A61-A68, 2010.
伏見 暁洋ほか:連載 エアロゾル学基礎講座 ―計測― 9. エアロゾルの炭素性成分分析,エアロゾル研究,33, 183-194, 2018.
(埼玉県環境科学国際センター・長谷川 就一) 2022年5月9日 ★