エアロゾルとは、「基本概念と対語」「エアロゾル」で解説されているように、空気中に微小な液体粒子(droplet)や固体粒子(particle)が浮遊している分散系、あるいは浮遊している粒子そのものを意味する。つまり空気中に浮遊している粒子状物質を表す総称であり、これら粒子状物質を対象とした学問分野(環境学、気象学、工学、建築学、医学、薬学など)に加え、物理化学性状を知るための計測技術や環境や健康を守るための技術開発もすべて関連分野に含まれる。
エアロゾルを基本としたこれら分野を一つの学問体系(エアロゾル学)と捉えれば、エアロゾル学は、形状、電荷、濃度などの性状や物性に関わる基本要素の解釈からはじまり、物理・化学的挙動(エアロゾルが引き起こす現象)の解明やそれに必要な計測技術の開発、さらにはこれら計測技術を応用した大気汚染や気候変動の調査から、健康被害の低減を目指した排出規制の策定に貢献するなど、人間社会とも大きく関わっている。その一方で、工業的な分野であれば、薬剤や医薬品の開発、農薬の開発、高機能ナノ粒子や新素材の開発など、主に化学プロセスにおけるエアロゾルの利用技術に関する研究だけでなく、病院や食品工場、クリーンルームといった製造環境における清浄空間の創出など、エアロゾルを除去する技術開発も含まれる。
このようにエアロゾル学は非常に多岐にわたる分野から成り立っており、科学技術の発展や高度化のみならず、人の福祉や健康(幸福度)に至るまでの広い範囲を対象とした学問分野である。
参考文献
日本エアロゾル学会(編)、エアロゾル用語集、20-21、京都大学学術出版会、2004.
日本エアロゾル学会 畠山史郎・三浦和彦(編著)、みんなが知りたいPM2.5 の疑問25、147-153、成山堂書店、2014.
(埼玉大学・関口和彦)2016年4月28日、2022年4月30日改訂 ★