空気感染とは、直径5 µm以下の病原性微生物やそれらを含む粒子を吸入することによって起こる感染のことを言う。液性成分をまとった飛沫から液体が蒸発し飛沫核になったものが浮遊することから、飛沫核感染とも言う。飛散する粒子の直径が小さく長時間空気中に浮遊するため、微生物が空気の流れにより広く伝播されるのが特徴である。
空気感染を起こす微生物には、結核菌、麻疹ウイルス、水痘や帯状疱疹を起こすヘルペスウイルスなどがある。
医学分野において定義されている“飛沫か飛沫核か”を分ける「粒子径5 µm」という数字には、科学的根拠はないということが近年言われてきている1)。この「5 µm」という数字は、感染者から発生した感染性微生物を含む飛沫が相手に到達するか否かという現実面から定められた数値であることが示唆されている。また、液滴として発生した粒子は、空気中では水分が蒸発するため粒子径が変化していくが、唾液を用いた実験では環境温20~29℃、相対湿度6~65%の実験条件では蒸発後の最終粒径は初期粒径の約20%になるという報告がある2)。したがって、空気中に浮遊した液滴粒子は、乾燥によって粒子径が小さくなると浮遊する時間が長くなることになる。
1) 竹川暢之、エアロゾルと飛沫感染・空気感染、エアロゾル研究 36(1): 65-74、2021.
2) Lieber C, Melekidis S, Koch R, Bauer HJ., Insights into the evaporation characteristics of saliva droplets and aerosols: Levitation experiments and numerical modeling. J. Aerosol Science, 154, 105760, 2021.
(産業医科大学産業保健学部 石松維世) 2016年4月1日、2022年5月19日更新 ★