後方散乱係数は、単位厚さの大気層から、散乱角180度の単位立体角への散乱を表す係数である(単位はsr-1m-1)。エアロゾル計測では、主にライダー特有のパラメータである。
空気分子によるレイリー散乱は、分子1個あたりの散乱強度の角度分布(位相関数)が分子によらずほぼ同じとみなすことができるため、後方散乱係数と全立体角の散乱を積分した散乱係数(=消散係数)の比は一意に決まる。一方で、エアロゾル粒子による散乱は、粒子の大きさ、形状、複素屈折率、入射波長により散乱パターンが複雑に変化する。そのため、後方散乱計測からエアロゾルの物理パラメータを推定する際には、解法による工夫や、多波長計測・ラマン散乱計測等の複合観測を行う必要がある(大気エアロゾル観測「ライダー観測」参照)。
(京都大学・矢吹正教) 2016年5月1日 ★