CVDとは、Chemical Vapor Depositionの略語である。CVD法は、蒸気(ガス分子)の化学反応を経て、目的とする固体(または液体)を析出させる方法一般を指し、析出が気相中で起こる場合は粒子を得るひとつの方法となり得る(エアロゾル粒子の発生に対してはChemical Vapor Synthesisと呼ぶべきとの見解もみられる)。工業的には、金属の酸化物、窒化物、炭化物や、炭素の粒子・ナノワイヤ・ナノチューブなどのさまざまな材料粒子の発生方法として、広く検討・利用されてきている。
原料(化学反応を経て目的組成の粒子に変換される物質)、原料の蒸気化の手段、化学反応を起こさせるためのエネルギー源、化学反応の開始・停止のタイミング、発生した粒子の浮遊中の取扱い・回収手法など、発生方法に関わるあらゆる操作因子・条件が、互いに複雑に影響し合いつつ、発生粒子のサイズ、サイズ分布、組成、結晶相、濃度、凝集状態を大きく左右するため、目指す性状の粒子を得られるかどうかは基礎実験等の検証を経ないとわからない。ただし、いったん適切な発生条件を見い出せれば、発生装置のスケールアップによって粒子の大量発生(生産)が可能な場合も多く、このことはCVD法の最大の長所である。実用化されている粒子発生のプロセスにおいて、原料蒸気を反応させるエネルギー源の代表的なものには、電気ヒーターによる加熱、可燃・支燃性ガスとの混合燃焼、プラズマ場での加熱や活性種化がある。
(広島大学・島田学) 2016年5月2日 ★