火山性エアロゾルは、火山活動によって生じる大気エアロゾルであり、噴火によって直接噴出される一次粒子と、大気中で火山性ガスから生成される二次粒子がある。一次粒子には、過去の噴出物や非火山性の土壌なども含まれるが、多くは、噴火時に高温状態で破砕されたマグマが大気中で固体化したテフラ(火砕物)であり、火山岩塊(直径64 mm以上)、火山礫(2~64 mm)、火山灰(2 mm以下)に分類される(新堀、2015)。マグマの主成分は、SiO2, TiO2, Al2O3, FeO, MnO, MgO, CaO, Na2O, K2O, P2O5などを主成分とするケイ酸塩である(嶋野、2015)。
火山性ガスには、H2O、CO2、SO2、H2S、HCl、HFなどがあるが、このうちSO2やH2Sは、大気中で最終的に硫酸(H2SO4)へ酸化され、液滴(硫酸エアロゾル)を形成する。硫酸エアロゾルは、主にサブミクロンサイズであるため重力落下による除去速度が遅く、成層圏で生成された硫酸エアロゾルは、数年のタイムスケールで滞留する。成層圏の硫酸エアロゾルは、太陽光を遮蔽(散乱)することにより大気を冷却する効果があり、またオゾン層破壊を促進する(Vanceら, 2010)。
火山灰は、土石流、車両や鉄道、航空機の運行支障、農林畜産業への被害、電力施設の障害、人間への健康被害(石峯, 2015)など様々な形態で災害の原因となるため、日本では、気象庁が降灰予報を発表している(Hasegawaら, 2015)。航空機に対しては、航空路火山灰情報センター(VAAC)が、世界を9領域に分けて、実況と予測情報を提供している(吉谷ら,2015)。
マグマ量換算の噴出量が1014 ~ 1015 kgに達する超巨大噴火は、過去数万年に1度の割合で起こっているが、そのような噴火は、超広域的な火山被害や、全球的な寒冷化をもたらすことが警鐘されている(高橋, 2012)。
参考文献
石峯康浩, 火山灰ならびに火山ガスの健康影響 エアロゾル研究, 30, 177-182, doi: 10.11203/jar30.177, 2015.
新堀敏基, 数値シミュレーションによる降灰予測 エアロゾル研究, 30, 168-176, doi: 10.11203/jar.30.168, 2015.
嶋野 岳人, 火山噴出物の特徴と試料採取 , エアロゾル研究, 30, 183-189, doi 10.11203/jar.30.183, 2015.
高橋正樹, 超巨大噴火と「火山の冬」 エアロゾル研究, 27, 278-283, 2012.
吉谷純一; 安田成夫; Jonas Eliassón; 味喜大介; 井口正人., 火山噴火航空機事故の取組と大気火山灰濃度の航空機観測研究, エアロゾル研究, 30, 161-167, doi: 10.11203/jar.30.161, 2015.
Hasegawa Y., Sugai, A., Hayashi, Yo, Yu., Saito, S., Shimbori, T., Improvements of Volcanic Ash Fall Forecasts Issued by the Japan Meteorological Agency, J. Appl. Volcanol., 4, 2,DOI: 10.1186/s13617-014-0018-2, 2015.
Vance, A., McGonigle, A. J. S., Aiuppa, A., Stith, J. L., Turnbull, K., and von Glasow, R., Ozone depletion in tropospheric volcanic plumes, Geophys. Res. Lett., 37, L22802, doi:10.1029/2010GL044997, 2010.
(気象研究所・財前祐二) 2016年4月28日 ★