液体状・固体状の水をほとんど含まない状態で、エアロゾルが視程を悪化させている現象。雨や霧、雲のように水分を多く含む粒子が大気中を落下または浮遊している現象は大気水象(hydrometeors)と呼び、区別されている。大気水象と同様に、大気塵象も気象観測の「現在天気」として観測し記録されている。
日本で観測される主な大気塵象としては以下のものがある(気象庁地上気象観測指針の定義解説から抜粋)。
黄砂(Yellow sand):砂塵が空中に浮遊し、天空一面を覆い、徐々に降下する現象。はなはだしいときは天空が黄褐色となり、太陽が著しく光輝を失い、雪面は色づき、地物の面には砂塵が積もったりすることもある。
煙霧(Haze):エアロゾルが大気中に浮遊し、天空が乳白色に濁って見える現象。相対湿度は75%未満のことが多い。
煙(smoke):燃焼により生じたエアロゾルが大気中に浮遊している現象。
降灰(Ash fall):火山の爆発によって火山灰などの火山性エアロゾルが空中に吹き上げられ、それが徐々に地面に降下する現象。
エアロゾルに関係の深い大気水象としては、もや(mist)と霧(fog)がある。「霧」は、微小水滴が大気中に浮遊することで視程が1 km未満となる現象で、その時の相対湿度は100%に近い。「もや」は、微小水滴または湿った吸湿性のエアロゾルが大気中に浮遊することで視程が悪化し、視程1km以上の場合をいう。相対湿度は75%以上の場合が多いが、100%になることはない。もやと煙霧との違いは湿度の違いによる。
国内で観測される煙霧の頻度は、大気汚染の程度や越境汚染の影響を受ける頻度と関係があると言われている(山口・竹村、2011)。
参考文献
和達清夫(監修)、気象の事典、東京堂出版、p290、1993.
気象庁、地上気象観測指針、p106-107、2002
気象庁が天気予報等で用いる予報用語、「氷、霜、霧、雷、日照時間」、(2021年6月現在)
山口慶人・竹村俊彦、天気、58、965-968、2011.
(名古屋大学・長田和雄) 2022年4月1日