大気中のエアロゾルは、nmオーダーから100 µm程度までの大きさで広く分布しており、その中の粒径10 µm以下のものを浮遊粒子状物質(SPM)と呼び、このSPMの大気中における質量(体積)濃度分布は2.5 µm付近を谷として、二峰型の分布を示す。このうちの大きい側を粗大粒子と呼び、小さい側を微小粒子(PM2.5 )と呼ぶ。PM2.5 はSPMとともに、日本の大気汚染に係る環境基準(環境省)となっている。
エアロゾルの発生源には自然現象を起源とする自然起源と、人間活動を起源とする人為起源があり、土壌粒子や海塩粒子、自然発生的な粉じん(物の破砕に伴って発生、飛散する粒子)などの自然起源粒子は、主として粗大粒子の領域に含まれる。一方、工場や事業所からの煤じん(燃料およびその他の物の燃焼に伴って発生する粒子)やディーゼル排気微粒子、さらには、工場や自動車などから排出されたガス状物資が大気中で光化学反応を起こし粒子状物質となるような人為起源の粒子は、主としてPM2.5の領域に含まれる。
エアロゾルはその生成機構に応じて一次粒子と二次粒子に分類され、さらに粒径に応じて前述したPM2.5と粗大粒子に分類される。一次粒子は発生源から直接大気中へ粒子として放出されたもので、人為的な燃焼による煤じんやディーゼル排気粒子として放出されるPM2.5に加え、自然起源である海水の飛沫から生成する海塩粒子、強風により巻き上げられる土壌粉じんや黄砂、火山の爆発による火山灰や粉じんなどの粗大粒子も含む。また、植物葉表面から生成するワックスなどの一次粒子は自然起源であっても、微小粒子を形成するため主としてPM2.5の領域に存在する。一方、二次粒子は、大気中への放出時には気体であるが、放出後に化学変化(光化学反応や中和反応)や物理変化を起こし、より揮発性の低い物質に変化することで凝縮や既存粒子への拡散付着を起こし相変化するもので、ガス状物質(前駆体)が二次的に粒子になったものを指す。これらは自然起源、人為起源に関わらず、そのほとんどがPM2.5中に存在する。これは、主に大気中での光化学反応を経て生成するために、粗大粒子が形成されにくいことに起因する。
このように、自然起源で一次粒子のものはほとんどが粗大粒子中に存在するため、降雨現象に関わらず重力沈降により大気中から除去されるが、人為起源の一次粒子や二次粒子は主としてPM2.5中に存在するため、降雨による沈着過程(レインアウトやウォッシュアウト)がない場合には、長期にわたって大気中を浮遊することになる。このような累積効果も高濃度汚染を引き起こす要因となっており、高濃度汚染時ほどPM2.5の人為起源の割合が高くなる傾向にある。発展途上国などにおいては、急速な経済発展がこれら人為起源粒子の増大を招いており、最近ではこれら汚染が局地的な汚染から広域的な汚染(越境汚染)へと広がりを見せている。
表 発生源と浮遊粒子状物質中の主要構成成分