大気エアロゾルの主要な無機成分には,元素状炭素(Elemental Carbon;EC),硫酸塩,硝酸塩,塩化物,炭酸塩などがある.
ECは熱分離・光学補正法(別項参照)を用いて分析する.硫酸塩,硝酸塩,塩化物については水溶性であることから,純水に抽出しイオンクロマトグラフ法(IC)を用いて分析する.これらは陰イオンとして分析されるが,この対となる陽イオンには,ナトリウム,アンモニウム,カリウム,カルシウムなどがあり,これらもICにより分析される.
また,微量な無機成分として,アルミニウム,バナジウム,鉄,亜鉛,鉛など,軽元素から重金属まで幅広く存在する.こうした元素の分析法には,誘導結合プラズマ発光分析法(ICP-AES),誘導結合プラズマ質量分析法(ICP-MS),原子吸光法(AAS),蛍光X線法(XRF),機器中性子放射化分析法(INAA),粒子線励起X線分析法(PIXE)など様々ある.これらの分析法にはそれぞれに長所と短所があるため,それらを考慮し目的に応じて選択しなければならない.
参考文献
長谷川就一:入門講座PM2.5 ―第2講 PM2.5の測定・分析と実態―,大気環境学会誌, 45, A61-A68, 2010.
萩野 浩之:連載 エアロゾル学基礎講座 ―計測― 7. エアロゾルの無機成分分析,エアロゾル研究,33, 40-49, 2018.
(埼玉県環境科学国際センター・長谷川 就一) 2022年5月9日 ★